斎藤さんによると、差別のメカニズムの根底には、生物の自己保存本能がある。長い進化の過程で、自身を襲う敵(捕食者)から逃れるために目や耳といった感覚器官を発達させてきた。その結果、脳神経系をそなえた脊椎動物は、敵だけでなく仲間内でも、感覚器官をフル稼働させながら、ほんの小さな「違い」を常に探すようになったという。 違いを見分けると、どちらが好き・嫌いという感情が必ず伴う。だから、「区別」と「差別」との間には、決定的な違いはないという。「脳神経系が発達すれば差別が出てくるのは当然のことで、避けようがない」。 国立遺伝学研究所の斎藤成也教授(本人提供) 犬や猫も感覚器官を使い、「差別」しながら子孫を残す相手を選ぶ。人間の場合、肌の色の違いによる人種差別など歴史的、文化的な刷り込みによって増幅される部分もあるが、本能に比べれば、「程度の違いに過ぎない」とみている。 ただ、「差別はなくせない」とする