みかわ・けい 1957年生まれ。専門は日本中世史。摂南大教授などを経て現職。冷泉家時雨亭文庫の調査に携わる。主な著書に「公卿会議」(中公新書)「後三条天皇」(山川出版社)など。 つい最近新聞の一面を飾った「定家本・源氏物語『若紫』の発見」。所蔵者から冷泉家に持ち込まれ、長く定家本系統の源氏物語を追い求めてこられた藤本孝一氏(冷泉家時雨亭文庫調査主任)の鑑定がなされたことも感慨深い。というのも、私は大学院生時代、藤本氏のもとで、調査員として冷泉家に出入りをさせていただいていたからである。 今回、最初に目に飛び込んできた『若紫』写本の特徴ある字体は、私が冷泉家でなじんできた定家自筆本『明月記』(藤原定家日記原本、国宝)の字体とうり二つであった。 定家の字体は、後世「定家様」と呼ばれ、書道の世界で尊ばれるようになった。それは、従来の平安時代の流麗な文字とは違う、ごつごつした独特なものである。定家