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  • 『発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい』綾屋 紗月、熊谷 晋一郎(医学書院) - 精神科医・斎藤環の書評ブログ

    →紀伊國屋書店で購入 私は精神科医だが、発達障害に関する知識は、ほぼ文献的なものに限られている。そういう「門外漢」として言うのだが、この領域の当事者はきわめて「面白い」ものが多い。それらはしばしば、専門家による臨床的記述をはるかに凌駕する。 綾屋氏と熊谷氏の共著である書もまた、まず「面白い」という角度から読むことをお勧めしたい。面白さという点から言えば、このジャンルでは永らく古典とされていたドナ・ウィリアムズ『自閉症だった私へ』(新潮社)に匹敵する、と言っても過言ではない。 それでは、なにがそんなに「面白い」のか。 書を読みはじめて、まず意表を突かれるのは、綾屋さんの抱える困難が、心理ではなく身体的なものとして描かれている点だ。私はここで、ドナ・ウィリアムズの「自分が自分であることに対して、体ほど大きな保証はない」という言葉を連想した。しかし綾屋さんの記述は、ドナよりもはるかに詳細

    『発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい』綾屋 紗月、熊谷 晋一郎(医学書院) - 精神科医・斎藤環の書評ブログ
    nehan48
    nehan48 2010/12/05
  • 『切りとれ、あの祈る手を――<本>と<革命>をめぐる五つの夜話』佐々木中(河出書房新社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「情報と文学の関係」 著者の佐々木中氏は『夜戦と永遠 フーコー・ラカン・ルジャンドル』(2008年)という大部の思想書で、注目を集めた。書でも特にルジャンドルが重要な導きの糸となっているものの、主題はあくまで「文学」に据えられている。 では、佐々木氏の文学観はどのあたりにあるのか。彼の語りは一種憑依型で、独特のリズムがあるが、言わんとすることは比較的単純である。すなわち、無味乾燥な「情報」の摂取にまで切り詰められた読書行為を、徹底して身体的で崇高なものとして捉え返すこと、これである。佐々木氏にとって、それはほとんど、読めないテクスト(聖典)を読み、しかも書き換えるという逆説的行為に近い。ゆえに、文盲であったムハンマド、読むことを「祈りであり瞑想であり試練である」といったルターが高く評価される。あるいは、ダンスや音楽を通じた「革命」が志される。 逆に、書では、「情報

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    nehan48 2010/12/04
  • 『スローモーション考―残像に秘められた文化』阿部公彦(南雲堂) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「モードとしてのスローモーション」 サイトでも執筆されている阿部公彦(あべ・まさひこ)さんによる単著である。書は、「ゆっくり」に秘められる意味を現代文化のなかでとらえようという大きな構想力に基づいている。そのためのキー概念となるのが「スローモーション」と「残像」という表現方法であり、そこからマンガ、絵画、ダンス、野球、小説、詩などの諸ジャンルが検討されていく。 近代的な価値観、近代資主義の産物としての「速度」はよく論じられる。また、それとの対比、あるいは批判としてスローライフ、スローフードなどの「ゆっくり」文化が論じられることもある。ただし、書はこれらのようにイデオロギー的な意味合いで「ゆっくり」文化を称揚するものではない。それよりは、表象としての「スローモーション」を解き明かし、そのなかにある意味を丹念に検討しようとするものである。 著者は、第1章の冒頭で「

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    nehan48 2010/11/30
  • 『障害受容再考――「障害受容」から「障害との自由」へ――』田島明子(三輪書店) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 自分自身がぼんやりと感じた違和感に徹底してこだわりなさい、と社会学ではしばしば教えられます。というのも、そうした違和感は、日々の生活の中では流されてそのままにされがちですが、実は非常に重要なテーマにつながることが少なくないのです。 このの著者の田島さんは、作業療法士としてのキャリアを、障害者の生活支援のための施設からスタートさせました。そこで彼女は次のような経験をします。どう評価しても一般就労は難しいと思われている人が「一般就労がしたい」と言うと、症例報告会や職員間の会話で「あの人は『障害受容』ができていない」と言われるのです。これを聞いて田島さんは、「もし私がクライエントの立場なら、そのようにこの言葉を用いられたら、とても嫌だな」と思ったといいます(『障害受容再考』ⅳおよび2~3ページ)。そしてこのぼんやりとした違和感は、その後の研究を通じて育まれ、このを貫く問

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    nehan48 2010/11/24
  • 『蟻族――高学歴ワーキングプアたちの群れ』廉思【著】 関根謙【監訳】(勉誠出版) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「就職難に直面した中国の地方出身大卒者」 日で話題になる「高学歴ワーキングプア」は、大学院卒のことである。特に、博士課程修了者や博士号取得者で仕事のない人々のことを指すだろう。 中国の大学院生も、特に文系出身者は、(まだ日ほど顕在化していないが)同じようなキャリアの不透明さに悩まされている。しかしこのはそれ以前の、大卒者の苦労を描いたものであり、大学卒業資格の価値下落の結果を書いたものである。 書が出版されたのは、評者が北京に滞在していた2009年のことであり、当時の中国で大変話題になっていたことを思い出す。英語圏と国内の学会誌のみを見ている大学・研究者の世界というより、広く読書界で話題を呼んだ。 地方から大学進学のため出てきたものの、低賃金の仕事しか見つからなかった、または仕事が見つからなかったなど、折からの就職難の中で望ましい就職のできなかった若者が大量に

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    nehan48 2010/10/28
  • 『希望難民ご一行様――ピースボートと「承認の共同体」幻想』古市憲寿・本田由紀【解説・反論】(光文社) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

    →紀伊國屋書店で購入 「豊富な一次資料を用いた若者の『自分探し』分析」 三浦展(『下流社会』)などの著名な論者により、若者が夢の「青い鳥」を追い過ぎているという言説がひとしきり行き渡った。しかし他方で、現在の若者はリスクテイクをせず、を読まないし旅行にも行かないなど、自閉的になりつつあるという人も多い。一体若者は、内実のない夢を追っているのだろうか、引きこもり内閉していっているのだろうか。 この『希望難民ご一行様』の著者、古市憲寿は25歳で、彼自身が若者と呼ばれてしかるべき年代である。書は大学院に提出された修士論文を元にしている。 古市は三浦展に近い見方をしている。彼がサンプルに選んだのはピースボートという、世界一周クルーズを行うNGOの活動である。 まずは古市の議論を概観してみよう。 最初に理論篇があり、1973年を境とする戦後世界の転換を経た「後期近代」を、諸個人が「終わりなき自分

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    nehan48 2010/10/21
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