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ブックマーク / www.kosho.or.jp (17)

  • 日本の古本屋 / 第27回 吉田純一さん 町に向かって本棚を開くひと

    2年前に、兵庫県のたつの市にはじめて行った。山田洋次監督『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(1976)でも描かれているように、揖保川沿いの龍野町には古くから町並みが残る。童謡「赤とんぼ」の作者・三木露風の故郷であり、路の側溝やマンホールの蓋には赤とんぼが描かれている。 このときの目的は、〈九濃文庫〉を訪れることだった。その少し前、千駄木の〈古書ほうろう〉で、「小沼丹生誕百年祭 井伏鱒二・三浦哲郎と共に生きて」と題するDMを見つけた。 「今年は小沼丹が亡くなって二十三年目の年となる。小沼丹の教え子、映画監督の前田陽一が亡くなって二十一年目、前田と同窓の三浦哲郎が亡くなって九年目、前田の畏友、竹内和夫は、昨年の六月に亡くなった。 そのような年に行う生誕百年祭である。 皆様のご来訪を願います。 ~いずれの青春も 茫々たる人生の只中にある~」 とある。その頃、小沼丹の復刊が続き、私もそれらを読ん

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    nekotuna 2021/04/12
  • 日本の古本屋 / 第26回 藤田加奈子さん 戸板康二を愛でるひと

    もう20年近く前のこと。当時、『季刊・とコンピュータ』の編集スタッフだった私は、仕事場にいるときに暇ができると、思いついた言葉を検索していた。そうやって見つけたサイトは聞いたこともない古書の図版を載せていたり、マイナーなテーマの研究成果を発表したりしていた。 藤田加奈子さんによる「戸板康二ダイジェスト」もそのひとつだった。演劇評論家にして小説家、エッセイストの戸板康二について、さまざまな角度から光を当てていた。私も中村雅楽ものの推理小説や人物エッセイは好きだったが、戸板康二自身のことは何も知らなかった。だから、ひとつひとつの記事やデータが面白かった。 サイトの中にあった「日日雑記」は、日々の古屋通いや映画館で見た作品などを記しており、私自身の興味に重なるところがあった。当時、女性が古について書いた文章は、雑誌でもウェブでもまだ少なかった。2003年からは「日用帳」という名前でブログと

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    nekotuna 2021/03/12
  • 日本の古本屋 / 『路上のポルトレ──憶いだす人びと』

    このを出して嬉しかったことは三つある。 四半世紀前、新潮社で『明治東京畸人傳』を出すとき、実は登場人物はかつて私の住む谷根千にふいと姿を現した人たちなので、「路上のポルトレ」という題を思いついた。しかし、おしゃれすぎて地味すぎると実現しなかった。 もう一つは、谷中に生まれ育ち、上野の藝大で学んだ有元利夫さんのフレスコ画が私は好きだった。あるとき私は編集者に提案してみたが却下された。しかしその編集者は私に紹介されて初めて知った画家の絵を別の著者の装丁に使ったのである。とても悔しい思いをした。今回、の容子さんのご快諾を得て内容にあった絵を使わせていただけた(「夜のカーテン」1980年)。 三つ目に、長年の友、南陀楼綾繁さんが、集英社『すばる』に連載した「こぼれ落ちる記憶」がになっていないのを見つけ、森さんが出会った人に関する思い出をにしましょうよ、と言ってくれたことである。になること

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    nekotuna 2020/12/30
  • 日本の古本屋 / 第22回 鈴木裕人さん 「龍膽寺雄」を掘り起こすひと

    ある日、見知らぬ人から一冊のが送られてきた。鈴木裕人『龍膽寺雄の』と題する同書はA5判・230ページで、龍膽寺雄の短篇と随筆に加えて、同時代に吉田謙吉とである龍膽寺魔子が書いた龍膽寺評、長男の橋詰光氏の回想などが収録されている。人の肖像や資料のカラー写真も入っている。表紙の絵を描いているのは、漫画家の山川直人さんだ。 龍膽寺雄(りゅうたんじ・ゆう、1901~92)は、1928年に雑誌『改造』の懸賞小説に『放浪時代』で入選。モダニズム文学の寵児となるが、いまではその作品は忘れられている。むしろ、サボテン研究家としてのほうが知られているだろう。私も名前を知っている程度だったが、今年、平凡社の「STANDARD BOOKS」で『龍膽寺雄 焼夷弾を浴びたシャボテン』が出て、ちょっと興味を持っていた。 『龍膽寺雄の』には鈴木氏による「龍膽寺雄の読み方・読まれ方」という文章があって、同時代の

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    nekotuna 2020/11/10
    龍膽寺雄と吉田謙吉ってどんなつながりがあるのかしら…気になる。
  • 日本の古本屋 / 第19回 カラーブックスとものかいさん 人生初のコンプリートを遂げたひと

    昨年、熊市に取材に行った。その夜、〈舒文堂河島書店〉の河島さんに誘われて飲んだ席で、「カラーブックス」を集めているという女性に出会った。 カラーブックスは1962~1999年に保育社が発行していた文庫サイズのシリーズで、さまざまなテーマが取り上げられている。タイトル通りカラーが満載で、古屋で見つけるとちょっと持っておきたくなる。しかし、あれ、全部で何冊あるんだろう? と聞くと、彼女はすぐに「909冊です」と教えてくれた。 彼女はその数か月後に「カラーブックスとものかい」というアカウントでTwitterを開始。1日1冊ずつ紹介している。なので、ここでは彼女のことを「カラともさん」と呼ぼう。 次に熊に行ったときにはぜひ取材したいと伝えてあったが、新型コロナウイルスの拡大によってしばらくは行けそうもない。というわけで、この連載では初めてのZoomでの取材となった。 カラともさんは熊県生ま

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    nekotuna 2020/08/09
  • 日本の古本屋 / 好きなことをやって生きていければ

    坪内祐三さんは、今年の一月、急性心不全で突然亡くなった。六十一歳だった。坪内さんと初めて会ったのは、このの年譜を見ると一九九二年とあるので、彼は三十四歳、私は四つ上なので三十八歳だ。みなそうだろうが、三十代の頃、自分が六十代になるなんて想像もしなかった。 代々幡斎場で微笑みかけるような遺影を見た。そこに老いの影も感じなかった。老人になった坪内祐三を遂に見ることはないのだと私は思った。この先、顔のしわを増やしながら、『評伝山口昌男』を書き、『日編集者列伝』や『昭和世相史』や『アンダーグランド精神史』を書いたのかもしれない。たくさんのことをやり残したはずだが、それでも、と思う。それでも彼は、三十代の頃には想像もしなかった歳まで生き、ものを書き続けた。 『の雑誌の坪内祐三』は、月刊「の雑誌」に載った坪内さんの座談、対談、インタビュー、エッセイの内、単行に未収録のものを集めた。たとえば冒

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    nekotuna 2020/08/07
    内堀弘さんによる坪内祐三追悼文。例の本も入手しなくてはね。
  • 日本の古本屋 / 戦前の愛書家、古本者の全体像は本書から――『昭和前期蒐書家リスト―趣味人・在野研究者・学者4500人』

    戦前の愛書家、古者の全体像は書から――『昭和前期蒐書家リスト―趣味人・在野研究者・学者4500人』 ブログ「書物蔵―古オモシロガリズム」の記事「蒐書家(ブックコレクター)人名事典の提唱及び作り方について」(https://shomotsugura.hatenablog.com/entry/20140428/p3)に触発され、実際に人名事典の執筆を進めている過程の副産物、それが書(全174頁)である。一言でいうと、昭和前期の各種蒐書家名簿を統合したリストで、この夏お会いした同好の士に勧められたことから、急ぎ同人誌として出版することにした。人名事典の前段階であるため情報量は少ないが、これだけの人数の戦前の愛書家、古者を一望できる資料は初めてだろうと思う。 今回統合できた名簿は下記の6種である。 「全国蒐書家名簿 第1回(昭和8年12月10日現在)」『図書案内(1)』古典社(1934年

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    nekotuna 2019/12/25
  • 古本屋ツアー・イン・ジャパン2019年上半期報告

    相も変わらず東京にのたくり、古を買って暮している。日々、ご近所への小さな旅を繰り返し、お眼鏡に適った古を働き蟻のようにせっせと家に運び込んでいる。その代わりに、もはや不要と思ったは、スパッと思い切りドシドシ手放しているので、各部屋に蔓延るの山は山として、さほどその形を変えることはない。それだから、『ほぼの中で生活する』という馬鹿げたスタイルに変化もなく、今年もあっという間に半年が過ぎてしまった…。 一月は西荻窪「にわとり文庫」の百円均一大会からスタート。お年玉として、明治の押川春浪を手に入れる。阿佐ヶ谷では元貸屋の古屋「ネオ書房」が突然閉店半額セールをスタート。貴重ながびっくりするような安値で供されることがあるので、毎日のチェックが欠かせなくなる。この日は偕成社文庫「水曜日のクルト」を50円で入手する(さらにその後、矢川澄子の仁木悦子宛献呈署名や、仁木の旧姓名である大

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    nekotuna 2019/07/25
  • 日本の古本屋 / 第4回 松﨑貴之さん 噴水の歴史に魅せられたひと

    世の中には、普通の人の目に入っていながら見過ごされているものがある。そういったものに執着し、調べたり集めたりするのがマニアという存在だ。今回紹介する松﨑貴之さんは、「噴水」に関する資料を集めている人である。 松﨑さんは1979年に長崎市に生まれる。父は長崎駅近くで酒屋を営んでおり、店内の立ち飲みスペースには多くの客が入りびたっていた。 「ぼくが子どもの頃はまだ三公社(専売公社、電電公社、国鉄)の時代で、そこの職員がよく来ていました。店のお客さんによく遊んでもらいました」 祖母と両親と妹の5人家族。亡くなっていた祖父、それに母も父も好きで、家の中にはがたくさんあった。当時全盛だったファミコンはなかなか買ってもらえなかったが、なら買ってくれるので、近所の〈メトロ書店〉によく行っていた。 小学4年生で、地方に残る珍説・奇説を集めた『歴史』の増刊号を買い、歴史に興味を持つ。長崎は少し歩く

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    nekotuna 2019/04/10
  • 第42回ヨコハマ古書まつり / 古本まつりに行こう / 日本の古本屋

    内容 他 錦絵・版画・古地図など紙モノコーナー併設 ※目録発行します。 ■参加店 一心堂書店・沙羅書店・しましまブックス・誠文堂書店・高村書店 たちばな書房・雲雀洞・船越書房・フルホニズム・古書馬燈書房・グリム書房 --------------------------------------------------------------------- お問い合わせは 有隣堂店書籍館 神奈川県横浜市中区伊勢佐木町1-4-1 045-261-1231 営業時間10:00~20:00 ------------- 即売展目録 ※目録希望の方は、下記までFAX及びハガキ又はメールにてお申し込み下さい。グリム書房 〒242-0825横浜市神奈川区反町1-6-6 SS反町ビル503 FAX:045-316-5140 E-mail:grimm@d6.dion.ne.jp までお願いいたします。 ホーム

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    nekotuna 2018/10/01
  • 日本の古本屋 / (公財)たましん地域文化財団の季刊郷土誌『多摩のあゆみ』 第169号「デジタル地図でみる多摩の歴史」のご紹介

    (公財)たましん地域文化財団の季刊郷土誌『多摩のあゆみ』 第169号「デジタル地図でみる多摩の歴史」のご紹介 (公財)たましん地域文化財団 歴史資料室 坂田 宏之 私ども(公財)たましん地域文化財団の郷土誌『多摩のあゆみ』は、昭和50年(1975)11月、当財団の設立母体である多摩中央信用金庫(現・多摩信用金庫)が店頭で無償配布する「茶の間の郷土誌」として創刊されました。以来、2・5・8・11月の各15日発行の季刊誌として、東京都の西部に位置する多摩地域の歴史・民俗・地理・自然などをテーマに、論考や情報などを掲載しています(A5判、毎号120頁前後、発行部数14,000部)。現在も多摩地域に82店舗ある多摩信用金庫各店で、無料で入手できます。またご希望の方には、お近くの郵便局からのお振り込みで1年間600円・3年間1800円の送料をお預かりして、全国にお送りもいたしております。 平成30年

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    nekotuna 2018/02/23
    第169号の特集は「デジタル地図でみる多摩の歴史」!
  • 日本の古本屋 / 「埴原一亟 古本小説集」のこと

    例えば、漱石の『門』や『明暗』、鴎外なら『青年』や『雁』、志賀直哉なら『暗夜行路』など、古典とも言うべき名作を読み返す愉しみは、かけがえのないものであるが、ときには評価の定まっていない誰も知らない忘れ去られた作家の作品を、こっそりひとり愉しむのもまた読書の醍醐味ではないだろうか。 そのようにして、加能作次郎や中戸川吉二を読み、嘉村礒多や宮地嘉六を読んだ。そして三年ぐらい前に埴原一亟に出会った。最初に読んだのは、文芸復興社の『埴原一亟創作集』で、これが良かった。他の作品集が最初だったらこれほどまで埴原にのめり込まなかったかも知れない。 さてそうなると、他の作品も読みたい。古の検索ができる「日の古屋」でも探すが、なかなか揃わなかった。でも地道に一冊ずつ集めて、自分が新発見したような気持ちになって読み続けた。すると、にできたら楽しいだろうと思うようになった。 私はこれまでに、撰者として黒

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    nekotuna 2017/09/26
  • 日本の古本屋 / 『町を歩いて本のなかへ』

    若い頃に受けた影響は、そのあとの自分を形づくる。いったんはその影響から逃れたように思えても、歳を重ねるとまたその頃の自分に回帰してしまう。私の場合は、1980年代前半がそうだ。中学から高校にかけて、SFやミステリ、マンガのや雑誌を読みふけった。田舎町の屋に置かれていないものが大半だったので、それらをどう手に入れるか考えるところから、読書がはじまっていた。 その頃の私は、雑誌のコラムが大好きだった。『の雑誌』『奇想天外』『噂の眞相』『宝島』『漫画ブリッコ』などを買うと、メイン記事は後回しにして、後ろに小さな文字で詰め込まれているコラムを熟読した。そして、そこで知った書き手のが出ると買って読んだ。情報センター出版局、廣済堂、プレイガイドジャーナル社、北宋社、白夜書房といったマイナーな版元から出たものが多く、初出一覧には見たことのない雑誌が並んでいた。それを手がかりに、また深掘りしていっ

    日本の古本屋 / 『町を歩いて本のなかへ』
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    nekotuna 2017/06/27
    南陀楼綾繁さんの新刊についてご自身のエッセイ。(雑文集というかバラエティブックの系譜よね〜)
  • 日本の古本屋 / 『中央線古本屋合算地図』

    ミステリアス文庫を始め、出版も手がける東京・西荻窪の古書店「盛林堂書房」と組んで、古屋ツアー・イン・ジャパンこと小山力也さんと共著による古屋「」シリーズを出してきた。『野呂邦暢古屋写真集』『古屋写真集』に続く、これが三冊目。 今回は、中央線沿線に出店してきた古屋を消滅したものも含め、半世紀分を各駅エリアごと、一枚の地図に「合算」しようという試みである。たとえば高円寺駅周辺に、現在は十数軒の古屋が現存するが、この射程を五十年ほど遡ってマーキングして行けば、四十軒を超えるのである。そのなかには、直木賞作家・出久根達郎さんが店主だった「芳雅堂書店」もあった。 古屋に限らず、家や店が無くなると、そのあと別の建物ができると、ほとんど痕跡はなくなる。空地になった時、「あれ、ここ以前は何があったっけ?」と戸惑うことは多い。古屋も屋号を覚えている一般客は少なく、「駅前にあった小さな古

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    nekotuna 2017/05/30
  • 日本の古本屋 / 『社史の図書館と司書の物語』神奈川県立川崎図書館社史室の5年史

    古書業界では馴染みのある社史も、社員や関係者への配布がほとんどの非売品なので、世間的に認知されているとは言い難い。その社史を約1万8千冊コレクションしている公共図書館があるのは意外かもしれない。くわえて、司書の仕事は外から見てわかりやすいとはいえず、その中でもかなり特殊な取り組みをしてきた。このような「社史」と「公共図書館」と「司書」が融合してどうなったか。書は神奈川県立川崎図書館の社史室における5年間の実践を記した一冊、もちろん実話である。ニッチなテーマの集合であるが、図書館に勤めているかのような感覚で、楽しく読みすすめられるように書いた。 同業者以外の知人に感想を聞くと、大方の反応は「こんなことまで図書館員がやっているとは知らなかった」であり、私自身が数年間を振り返っても「こんなことをやるとは思わなかった」というのが音である。 社史室の担当になって5年間、思い付いたアイデアは、小回

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    nekotuna 2017/03/26
  • 日本の古本屋 / 『アプリで学ぶくずし字 くずし字学習支援アプリKuLA(クーラ)の使い方』

    くずし字を読める人を増やしたい、もっと手軽に学習できるようにしたいと思い開発した、スマートフォン・タブレット用の初心者向けのくずし字学習支援アプリ“KuLA”(Kuzushi-ji Leaning Application)をリリースしたのが2016年2月18日。それからほぼ1年を経て書を刊行できたことは感慨深い。“KuLA”は5万ダウンロード回数を超え、多くのくずし字学習者に支持されている。昨年末のバージョンアップの改良点のひとつとして英語版も出来、国際的くずし字教育に、より貢献できるようになったと思う。「かわいい」「楽しい」と感想を言ってくださる方も多い書だが、れっきとした科研(挑戦的萌芽研究)の研究成果の一部である。その正式名称は「日歴史的典籍に関する国際的教育プログラムの開発」。つまり学術研究を社会還元したものとお考えいただきたい。 “KuLA”を設計・開発したのは橋雄太さ

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    nekotuna 2017/02/26
  • 日本の古本屋 / 『広告写真のモダニズム』は古書とともに

    中山岩太はモダニズム期と呼ばれる1930年代の日で、新興写真の牽引者として関西を拠点に活躍した写真家であった。書は中山が撮影した一枚の広告写真「福助足袋」をめぐって、当時の写真界やデザイン界を主とする視覚文化メディアが経験した衝撃や、その文化的変容を写真史の観点から考察したものである。と書きだすと、なにやらお堅いだけの専門書かと思われてしまいそうだが、さにあらず。記述にあたっては古書濃度をうんと高めに設定して、鋭意取り組んだつもりである。 その証拠をふたつ。巻頭の「はじめに」では、地元の古書店で掘りだした雑誌「広告界」の新年号附録『広告辞典1931』を使って、4ページ分の記述をやりくりした。そして巻末の「あとがき」では遠征先の古市にて、ダンボール箱一杯の紙束の中から引き抜いた60年前の神戸大丸の運動会プログラムについて、3ページにわたり浪費もとい記載した。 こんな調子であるから、中身

    日本の古本屋 / 『広告写真のモダニズム』は古書とともに
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    nekotuna 2015/03/31
    『本書でいちばん描きたかったのは、モダニズム期から戦時下へと移ろいゆくはざまにあって、芸術写真にも広告(報道)写真のどちらにも邁進できずに葛藤する写真家・中山の姿』
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