詩集は不思議だ。 ひらくたび、違う詩が目にとまる。 初めて読んだように沁しみてくる。 ひらくそのときどきが、毎回、新しい出会いなのだ。 昔、クルド系イラン人の友人宅を訪ねたとき、詩集占いをしてくれたことがあった。羊や豆を煮込んだ夕ごはんを食べ、小さなグラスに何杯もお茶を飲んで、もうお腹いっぱい……とみんなが暖炉の周りに腰を下ろしたとき、友人は待ってましたとばかり分厚い詩集を取りだしてきた。 それはスーフィーの偉大なる詩人ルーミーのもので、ひとりずつ順番に本を手にとって黒表紙を撫なで、好きな箇所をひらいてみよ、というのである。 私の番が来て、あてずっぽうにひらいた本を手渡すと、友人ははっは〜っと笑い、流麗なペルシャ語の詩を読みあげた。音楽のような響きをひとしきり聞かされたあと、ようやく友人の通訳と相なる。 あのときの詩がどんなだったか、さだかには覚えていない。 しかし秘められた何かを開封する
![星の味 ☆2 ”人ではない”|徳井いつこ|創元社note部](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/3f27bd55169b28dac40c9f5b16922859b7bd7a2a/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fassets.st-note.com%2Fproduction%2Fuploads%2Fimages%2F125725429%2Frectangle_large_type_2_803e266b0286247fe77b6bd436695501.jpeg%3Ffit%3Dbounds%26quality%3D85%26width%3D1280)