1 隋の煬帝は、漢音の「ようてい」ではなく、呉音で「ようだい」と読むのが通常である*1。その理由について、煬帝は悪帝であるため、「皇帝でありながら、その資格はないという意味」(陳舜臣*2)をこめたなどと説明されることがある*3。他方、これは特に理由のない読み癖にすぎず、「悪いやつだから帝(たい)だというわけでもない」(高島俊男*4)と明示的に「悪帝」説を否定する指摘もある*5。 後説が妥当と思うが、悪帝を理由とする見解も、少なくとも江戸時代に遡るため、直ちに切り捨てることはできず、その関係を検討しきれていない。しかし、本年3月、「悪帝」説を前提に、これを正面から論じた松下憲一「隋の煬帝はなぜヨウダイと読むのか」(史朋50巻37頁)という論文(以下「松下論文」という。)が発表されたので、ここで若干の整理をしたい。 2 我が国の漢字音は、古くは呉音が用いられた。しかし、奈良後期から、遣唐使や留
![煬帝を「ようだい」と読むことに関する覚書 - 略本雑記](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/54bdc034719326a41899359fcbd7d498f85cf26e/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-ak.f.st-hatena.com%2Fimages%2Ffotolife%2Fh%2Fhakuriku%2F20181105%2F20181105232242.png)