異変は、県大会からあった。 準決勝・盛岡中央高戦の試合後、1カ月ぶりに花巻東高・菊池雄星と顔を合わせると、そこには高校生らしいニキビ顔があった。 春にはなかったニキビ。「ストレスでできたんじゃない?」と声をかけると、「あー、はい。そうかもしれません。でも、ケアしてないだけなんで」と微妙な反応が返ってきた。 センバツ準優勝後、周囲のフィーバーぶりは異常だった。特に150キロ左腕として名前の売れた菊池雄星は別格。地元では野球に興味のない一般の人でも菊池雄の顔や名前だけは知っていた。コンビニに行けば「雄星がコンビニで何か買っている」と学校に連絡が入る。ときには花巻東高の野球部というだけですべて「雄星が……」と言われた。 マスコミの取材も殺到。花巻東高は取材に協力的で、お願いすれば時間を割いてくれるのをいいことに、無理な要求をする社もあった。グラウンドを訪れ、投げる予定のない日に「投げてい