米共和党のドナルド・トランプ前大統領が演説中に銃撃された事件を受け、米マサチューセッツ大学ローウェル校の犯罪学・法学の教授、アリー・パーリガーがメディア「カンバセーション」のインタビューに応じている。 パーリガーは、銃弾があと少しでもずれていれば、米国で内戦勃発の可能性もあったと指摘しているが、その理由とは?
ヘヴィメタル・バンド、メガデスの元ギタリストとして日本でもお馴染みのマーティ・フリードマンに、英紙「ガーディアン」がインタビュー。その唯一無二のキャリアと、いまだに魅了され続けているという日本への想いを語った。 メガデスのギタリストが、なぜ日本の昼間のテレビ番組で化粧品の品評をするに至ったのか、というのは、ヘヴィメタル史上、最も困った問いと言っていいだろう。 「チャレンジするのに夢中になったんですよ。本当にこれが自分にできるんだろうか、ということに」とマーティ・フリードマンは笑う。 「その最難関が、ある番組の審査員でした。女の子たちが登場して、念入りにメイクをする番組なんです。この世のなかに、自分にとってこれほどどうでもいいことはないのに。『ほう、このファンデーションにこのチーク、あの子によく似合うじゃない!』なんてね」 フリードマンがメガデスに参加したのは1990年のことだ。彼はこのヘヴ
「わび・さび」はいまや海外でも“Wabi-Sabi”として知られているが、この日本独特の概念を定義するのは日本人でも難しいだろう。ワシントン大学で日本語や日本文学を教えるポール・アトキンス教授が、「わび・さび」が日本国外に広まった経緯と、その美学に外国人が惹かれる理由を解説する。 日本に逆輸入された 先日ニューヨークを訪れた際、マンハッタンにある日本の書店に立ち寄った。日本に関する英語の本が並ぶなか、「わび・さび」専用の棚があり、『わび・さびの恋愛術』『わび・さび道』『芸術家、デザイナー、詩人、哲学者のためのわび・さび講座』などのタイトルが陳列されていた。 いったい「わび・さび」とは何なのか、そしてなぜ「寿司」や「空手」といったジャンルと並び、独自のコーナーが設けられるほどの扱いを受けているのか? 「わび・さび」は、一般的には伝統的な日本の美意識と説明されている。「傷がある」または「未完成
なぜ古代世界には「去勢」の風習があったのか? 去勢された者はどんな存在と見られていたのか? 古代ローマ世界での場合を中心に、イスラエル紙「ハアレツ」の考古学記者が深掘りする。 世界で初めて故意になされた雄の去勢が何だったかは、永久に不明のままだろう。現代の歴史家たちは、去勢は畜産から始まったと示唆している。それは、望ましくない繁殖を減らし、より穏やかで、より肥えた牛や豚を生み出すためだったというのだ。 人間の男性の去勢はどうやら、罰の一種として最初に導入されたようだ。古代の史料は、誰が最初にそれを始めたのかを明快に語っている。これほど倒錯したことを思いつけるのは、女しかいないだろうと──。 ギリシャの歴史家ヘラニコス(前5世紀末に著述活動)は、アケメネス朝ペルシア(前550〜前330年)の王妃アトッサ(在位前520〜前486年)が最初の宦官を生み出したとしている。古代ローマ後期、ローマの住
日本の漫画が人気なフランスだが、いわゆる少女漫画の作品はまだあまり知られていない。そんななか、フランスで1月末に開催されたアングレーム国際漫画祭に合わせ、大規模な萩尾望都回顧展がアングレーム市美術館で開催された(2024年3月17日まで)。これを受け、仏紙「ル・モンド」がオンラインで萩尾にインタビューをしている。 戦後日本の漫画界の立役者 萩尾望都の50年以上に及ぶ創作活動から生まれた作品の数々に目を通すと、痛感することがある。それは、フランスが世界有数の日本漫画消費国を自負するわりに、日本の漫画の受容においてすっぽりと抜け落ちてしまっている部分があることだ。 これは萩尾だけに限った話ではないが、フランスでは、日本の著名女性漫画家の作品の多くが出版されていないのだ。1972~76年に描かれた萩尾の初期の名作『ポーの一族』のフランス語版が出版されたのは、2023年に過ぎない。 1949年生ま
世界第2位の「漫画消費国」といわれるフランス。日本漫画が絶大な人気を誇るなか、これまであまり評価されてこなかったのが少女漫画だ。だが、ついに「shôjo」にも光が当てられはじめた。それには、熱烈なファンの力もある。 「絶対にアングレームに行かなくては」──ブログ「Club Shôjo」の管理人、オードリー・マニスカルコはそう決意していた。彼女が興奮する理由は、漫画家・萩尾望都(はぎお・もと)の来仏だ。2024年1月、フランス南西部の街アングレームで開催されたヨーロッパ最大級の漫画の祭典「アングレーム国際漫画祭」では、彼女の栄誉を称え、特別回顧展が催された。 1949年生まれの漫画界の巨匠、萩尾望都は、永遠の若さに囚われた吸血鬼一族を描いた『ポーの一族』(小学館)の作者だ。1970年代に日本で出版されたこの傑作がフランスに上陸したのは、2023年になってからだった。フランス語版を出版したアカ
エスコートサービス業に従事していたオーストラリア人男性が回顧録を出版。クライアント女性たちが求めていたのは素晴らしいセックスだけではなく……。 エリーとサリーの場合 男性たちがエリー(仮名)に目を留めなかったわけではない。「私のほうが男性に興味を持てなかったんです」と彼女は言う。 友人たちが恋愛し、結婚して子供を持つなか、エリーの関心は「学校を卒業して大学へ行き、仕事を得て、その他いろいろなことをする」ことだった。 それは科学の分野のキャリアで実を結んだが、37歳になっても処女のままだった。「自分の一部が欠けているように感じていました」とエリーは言う。 54歳のサリー(仮名)は結婚や子供には興味がなかったが、「素敵な恋愛」は何度もした。彼女を悩ませてきたのは、一夫一婦制だ。 「それは私にとっては、どうでもいいことだったからです」と彼女は言う。 企業のマーケティング幹部であるサリーはこの10
日本を代表する写真家・森山大道の回顧展が、英国で初めて開かれている。このタイミングは「ちょっと遅いですね」と冗談を言う森山に、英紙「ガーディアン」が取材した。 森山大道を知ろうとするのは容易なことではない。85歳になるこの日本の写真家は、東京にある自宅から私の質問に通訳を介して答えるが、個人的な質問は即座にいなす。「写真家は写真を撮ることしかできません」と肩をすくめる。 だが森山がこれまでしてきたのは、写真を撮ることだけではない。路上写真家として最もよく知られてはいるが、森山はその形式を極限まで高め、写真とは何か、どう体験されるのか、その倫理や影響とは何かを問うてきたのだ。 この50年で最も象徴的で影響力のある写真を何枚も撮った人物でもある。網タイツのクローズアップから野良犬のポートレイトまで、そうした写真は日本の戦後期の詩的で、シンボリックな表現とされている。 英ロンドンの「フォトグラフ
いまや「日本のシンドラー」「東洋のシンドラー」として日本国内外で知られる杉原千畝。だが、日本では杉原の物語が誇張され、ナショナリズムに利用されているとの指摘も研究者らから出ている。ユダヤ系メディア「ジューイッシュ・テレグラフィック・エージェンシー」の記者が杉原をめぐる最近の研究を紹介しつつ、岐阜県八百津町にある杉原千畝記念館も現地取材した。 東京は2021年に五輪が開催される数年前からすでに、世界に示す国家イメージを作り上げていた。 東京都教育委員会は、都内の公立学校に配布した資料で、「(生徒の)日本人としての自覚や誇りを高める」ための「先人の優れた業績」を紹介している。 この4ページの資料の大半を占めるのが、外交官の杉原千畝の物語だ。杉原は1940年、ヨーロッパを逃れようとしていたユダヤ人のために命を救うビザを何千も発給した人物だ。この資料は杉原の生涯と行動をドラマティックに再現しており
いまから1世紀近く前のドイツ・ベルリンに、驚くほど先進的で包摂的な性科学研究所があったことはあまり知られていない。その研究所を立ち上げたのは、ユダヤ人の性科学者だった。ユダヤ系メディア「フォワード」が振り返る。 この記事は米大手ユダヤ系報道機関「フォワード」で最初に掲載されたものです。フォワードの無料ニュースレター登録はこちら。 アドルフ・ヒトラーがドイツの首相になってからわずか数ヵ月後のことだ。ナチスを支持する大学生らがドイツの34の町や都市で見せしめの焚書を企画し、新生の「第三帝国」を祝った。 パレードやコンサート、演説も付随することが多かった、こうした「非ドイツ的」文書の破壊行為は、ナチス当局によって入念に記録され、いまやドイツがファシズムへと突入していったことの象徴となっている。 ホロコーストを連想させる主要なイメージのなかには、ベルリンの街路で煙を上げて燃える本の山の写真もある。
太平洋戦争中の米国では、敵国・日本の支持者と疑われた12万人以上の日系人が強制収容された。そのなかには、ハワイ在住の日系人も含まれていたが、戦後になるとその事実は長く忘れ去られた。 ハワイの悲しい歴史が見過ごされてきた背景には、国家の意図的な「黙殺」があったという。 1941年12月7日(日本時間12月8日)、日本軍がハワイの真珠湾を攻撃すると、米国政府は数年にわたって本土に住む日系人を強制収容した。 だが、ハワイ在住の日系米国人も家を追われ、強制収容所に入れられた事実はこれまで無視されてきた。 「地獄谷」と呼ばれた収容所 1942年2月、ルーズベルト米大統領は特定の地域を軍管理地域に指定し、そこからの強制退去を承認する「大統領令9066号」に署名した。 強制退去の対象となる民族は特定されていなかったが、標的にされたのは日系米国人だった。「日系人はスパイで、日本軍のために破壊工作をしている
神道系政治団体の政治的影響力 何百万人もの日本人にとって、神道は精神的修行というより文化的な修行だ。毎年正月を迎えると、多くの人が神社に参拝し、新しい年の幸運を祈る。また、恋愛や受験、就職がうまくいくように祈願する人も多い。 このような儀式は、決まった信条の下におこなわれているわけではない。土着の宗教である神道には、公式な教義も経典もない。一方、日本では一般的にほとんど知られていないものの、全国8万社の神社を包括する神社本庁の関係団体「神道政治連盟(神政連)」が、同性愛者やトランスジェンダーの権利などに対する保守思想の声を政治家のあいだに広めようとしてきた。 日本はG7の国のなかで唯一同性婚を合法化していない。2023年5月のG7広島サミットに向け、米国などの駐日大使らは、性的少数者の差別反対と権利擁護を盛り込んだ法整備を日本政府に促してきた。世論調査によると、日本では同性婚が大多数に支持
30年ほど前、ハーバード大学教授のマイケル・サンデルは1990年代の“黄金の仮面”に隠されたものを暴いた。 冷戦終結後に訪れた繁栄と陶酔の仮面をはぐと、そこには不安があふれていた。サンデルの耳に届いたのは、エリート層が推進するグローバル化に反対する人たちの声だった。 彼らの意見を集めて1996年に出版されたサンデルの著書『民主政の不満 公共哲学を求めるアメリカ』(勁草書房)は、古典として読み継がれている。いまこの本を再読すると、すでに現在の状況を予感させる記述がいくつも見られる。 また、サンデルは2020年に出版した著書『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(早川書房)のなかで、能力主義を解体し、生まれや環境の平等が欠如していることが真の能力主義の普及を妨害している、と指摘する。 能力主義が生んだ格差によって大きな被害を受けた労働者階級が、怒りを覚えるのは当然だ。サンデルは『民主政の不満』
ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川による性加害問題に対する告発が止まらない。一方、何十年も前から囁かれていたこの疑惑が追及されてこなかった背景には、日本企業に広く共通する問題が見られると、英紙「フィナンシャル・タイムズ」の日本特派員が考察している。 疑惑から免罪されてきたジャニー喜多川 2023年5月中旬、日本の主要テレビ局は、藤島ジュリー景子の1分間の謝罪動画を放送した。自己紹介に続く4つの文章に4回のお辞儀。そこには、後悔や反省、責任感のようなものは、まったく感じられなかった。 それは彼女の叔父であるジャニー喜多川の疑惑に対して求められた対応で、非常に簡潔だった。アジアで男性アイドルグループというジャンルを切り開いた喜多川は、若い男性タレントを抱える日本で最も有力な事務所を作り上げた。しかし、謎に包まれ、他者を意のままに操るスヴェンガリのような人物であった彼には、60年近く、性的
旧満州のハルビン市近郊に拠点を構えていた関東軍防疫給水部本部、通称「731部隊」は、人体実験の結果をもとに生物兵器の開発をしていたことで知られる。最近、中国の考古学研究チームが、黒竜江省に残された同部隊の地下研究施設についての報告書を発表。その非人道的な実験の一端を明らかにしている。 中国の黒竜江省文化財・考古学研究所のチームは、第二次世界大戦中、旧日本軍の「関東軍防疫給水部本部」、通称「731部隊」が生物兵器の開発のために恐ろしい人体実験をおこなっていた地下研究施設を発見した。 施設が見つかったのは、黒龍江省安達市の近郊だ。 長大なトンネルと複数の小部屋 2023年5月、中国の考古学誌「ノーザン・カルチュラル・レリックス」に、この地下研究施設の調査報告書が掲載された。同報告書は、この施設の発見によって、戦争犯罪の新たな証拠が見つかる可能性があると述べている。 「報告書には、いまも残る73
スタンフォード大学の教授で数学者の時枝正(ときえだ・ただし)は、「おもちゃ」を使って数学や物理の定理を解き明かす。スープ皿や木のレール、大きなコインを手に、「ショー」とも呼べそうな講義をいかにも楽しげに始めるその姿に、聴衆は一瞬にして心を惹きつけられるという。 数学者には二つのタイプがいるという──。一つは、チョークを握り黒板に向かう、理論派タイプ。もう一つは、フェルトペンとホワイトボードを使う、どちらかというと応用数学系の人である。 その伝でいうと、時枝正は第三のタイプの数学者である。しかもこの第三のタイプは、世界広しといえども彼一人だけの可能性がある。 時枝は仕事道具をどれも煎餅の空箱から取り出すのだが、箱は「すべて同じブランドのもの」なのだそうだ。たとえばその中身は、見かけはそっくりなのに、転がるものと転がらないものがある二つの不思議な構造物。ひもや輪ゴム、クリップの扱い方は、まるで
ホワイトハウスを去ってから約6年、ミシェル・オバマのファッションが輝いている。黒人初のファーストレディとして、できるだけ多くの人を喜ばせる(あるいは怒らせない)服を選ばざるを得なかった時代に比べ、いまの彼女は制約から解放され、自己表現を楽しんでいるのだ。 細身のドレスを脱ぎ捨てて ブックツアーが単なるブックツアーでなくなるのは、どんなときだろう。それはブックツアーが、人々の記憶に残る著者のイメージを作り変える機会となるときであり、人々に自分は変わったのだと示すときだ。 この人のブックツアーは、まさにそういうものになっている。 ミシェル・オバマの場合、少なくとも新著『The Light We Carry』(原題)の全米プロモーションで見せたイメージから判断すると、そのように思われる。何か新しいことが起きている(新著を刊行しただけではない)ことは明らかだ。 画家のシャロン・スプラングが油絵で描
ハンガリーの国家監査局が、国の教育制度が「あまりにも女性的になっている」リスクについて報告書を出したことが物議を醸している。 英紙「ガーディアン」によれば、同報告書は、「フェミニン化する教育」を「ピンク教育」と表現し、そのリスクについて「ピンク教育は、男子の発達を阻害し、人口問題(少子化)を引き起こす可能性がある」と、述べている。 「もし、国の教育が、“女性の特性”、たとえば、『感情表現の豊かさや、社会的成熟度の高さ』などを好意的に評価する傾向が強まれば、(男女の)平等はかなり弱められてしまうだろう」 そして、こう警告しているという。 「もし、(女子に比べて)より起業家精神に富み、リスクを冒す傾向のある男子の特性が過小評価され、男子たちの自由な成長が阻まれれば、男子たちは精神や行動面において問題を抱えかねないだろう」 ハンガリー当局は、このように警告する理由として、男子たちの「創造性と革新
2017年、ベルリンに暮らすマルコと名乗るドイツ人男性は、幼少期に会った覚えのある大学教授の写真を新聞記事の中で見つけた。最初に気づいたのは、その薄い唇だった。ほとんど見えないほど薄い唇が、子供心にも不快だったことを思い出す。 そして記事を読んだマルコは、写真のヘルムート・ケントラー教授が、ドイツを代表する著名な性科学者であったことを知って驚いた。その「ケントラー実験」に関する調査記事によれば、ケントラーは1960年代後半から、育児放棄された子供たちを小児性愛者の里親のところに送り込んでいたという。 実験はベルリン州政府によって認可され、資金援助もされていた。1988年にケントラーが州政府に提出した報告書には、実験が「完全な成功」だったと記されていた。 マルコは里親の家で育ち、その養父は頻繁にマルコを連れてケントラーの家を訪ねていた。マルコは現在34歳。1歳の娘がおり、育児を中心に日々過ご
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