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ブックマーク / book.asahi.com (35)

  • コジェーヴ「権威の概念」書評 肩の力抜いた、哲学のエッセンス|好書好日

    権威の概念 (叢書・ウニベルシタス) 著者:アレクサンドル・コジェーヴ 出版社:法政大学出版局 ジャンル:社会・時事・政治・行政 権威の概念 [著]アレクサンドル・コジェーヴ ヘーゲルの『精神現象学』で挫折し、コジェーヴの『ヘーゲル読解入門』でさらに挫折した世代に朗報。書では、肩の力を抜いて両方の哲学のエッセンスに触れることができる。 もちろん、権威のありようを現象学的に分析して、なぜ権威が存在するのか、権威の形而上(けいじじょう)学的基礎は何かと問い、さらに政治の領域へと演繹(えんえき)してゆく手法は厳密な学問のそれである。でも大丈夫。一般人には一般人の読み方がある。現に、身辺の世相を思い出しながら書を読むと、しばしば抱腹絶倒するのだが、思えば『精神現象学』もそうではなかっただろうか。 さて、Aが権威をもってBに働きかけるとき、Bは対抗することが出来るのに対抗しない。これが権威の基

    コジェーヴ「権威の概念」書評 肩の力抜いた、哲学のエッセンス|好書好日
  • 共感阻む「分断と格差」を越えて 朝日新聞読書面書評から|好書好日

    壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き 著者:A.R.ホックシールド 出版社:岩波書店 ジャンル:社会・時事 ホワイト・トラッシュ アメリカ低層白人の四百年史 [著]ナンシー・アイゼンバーグ/壁の向こうの住人たち アメリカの右派を覆う怒りと嘆き [著]A・R・ホックシールド 米国は、格差社会である。ティーパーティー運動やウォール街のオキュパイ運動のように、「持たざる者」による抗議も少なくない。それなのにトランプの当選後、白人貧困層の苦境が新たな発見のように注目されたのはなぜか。それは、米国は平等な国だとの認識ゆえに、社会階級による分断が見逃されているからではないか。 目をさます時だと歴史家アイゼンバーグはいう。米国では、身分の高い「貴顕」から年季奉公人や奴隷まで、階層秩序が当然視されてきた。英国から渡った貧者や無用者は底辺に止まる一方、ジェファーソンら郷紳(ジェントリー)は、

    共感阻む「分断と格差」を越えて 朝日新聞読書面書評から|好書好日
  • 恐慌が起こる本当の理由 マルクスの落とし穴 宇野弘蔵『資本論に学ぶ』より|じんぶん堂

    記事:筑摩書房 original image:janvier / stock.adobe.com 書籍情報はこちら 皆さんもご存じかもしれないけれども、資主義が生産方法を発展させ、労働の生産力が上がれば、労働者単位当たりの道具や機械や原料品というのは多くなります。したがって、資は非常に多くなっても、人口はそれほど多くならなくてよろしいという関係ができるのです。生産力が上がれば、単位当たりの原料や道具や機械の非常な増大にもかかわらず、人口の方は少なくてすむのですから、人口の増殖と資の増殖というのは、資の増殖の方がうんと速度が早くてもいいような関係がある。ただ、それには生産能力が上がらなければいけない。生産能力が上がらないというと人口がたりなくなる、という関係ができてくるのです。生産能力が上がらないというと、資はどんどんできるけれども、人口がたりない。生産能力が上がれば、単位当たりの

    恐慌が起こる本当の理由 マルクスの落とし穴 宇野弘蔵『資本論に学ぶ』より|じんぶん堂
    nisemono_san
    nisemono_san 2022/03/13
    “ある時期には労働者がたりなくなる、ある時期には労働者が余ってくる、たりなくなるときがいわゆる好景気で、余ってくるときがいわゆる不景気なのです。”
  • 「新宗教と総力戦」書評 天理教と国家の関係をさぐる|好書好日

    ISBN: 9784815808150 発売⽇: 2015/09/18 サイズ: 22cm/353,7p 新宗教と総力戦 [著]永岡崇 幕末以降、日では新たな宗教が次々と起こった。書が対象とする天理教もその一つであり、昭和初期には新宗教のなかでも最大の教団へと発展する。しかし、これまでの研究では大(いわゆる大教)や天理教から分派した天理研究会(現・ほんみち)のような、国家と対立して弾圧された教団が学者や作家に高く評価されてきた。 それらとは対照的に見えるのが天理教である。明治期に政府の公認を受け、昭和になると全面的に戦争に協力したからだ。2度も弾圧された大に比べて天理教の研究が目立たないのもうなずけよう。だが書を読むと、決してはじめから体制寄りだったわけではなく、教祖の中山みきからひ孫の中山正善へと受け継がれる過程で、天理教の教義や信仰の形態が不断に変容していったことがわかる。

    「新宗教と総力戦」書評 天理教と国家の関係をさぐる|好書好日
    nisemono_san
    nisemono_san 2022/02/24
    “著者は、教団の国家本位の立場はあくまでもたてまえにすぎず、それとは別に信仰次元で本来の立場があるとする「二重構造」論を批判する。”
  • 「専門家」であることの罠 『大衆の反逆』より|じんぶん堂

    記事:筑摩書房 original image:replica73 / stock.adobe.com 書籍情報はこちら 実験科学は十六世紀の末に始まり(ガリレオ)、十七世紀末に体系化をされ(ニュートン)、十八世紀の中葉から発展を開始した。あるものの発展は、その形成とは別のことであり、別種の条件に服しているのである。たとえば、実験科学の集合名詞である物理学の形成にあたっては、総合統一への努力を必要としたのであり、ニュートン及び彼の同時代人の仕事はその総合への努力であった。しかし、物理学の発展は、総合統一とはまったく逆の動きを要求した。科学が発展するためには、科学者が専門化する必要があったのである。ただし、あくまでも科学者であって科学そのものではない。科学そのものは専門主義的なものではない。もしそうならば、科学は事実上真実のものではなくなってしまうであろう。実験科学を総体的にとりあげたとしても

    「専門家」であることの罠 『大衆の反逆』より|じんぶん堂
  • 「共同体の救済と病理」書評 革命への熱狂が生む、逆ユートピアの悲惨|好書好日

    人々が“オンリーワン”をもとめる「私」化した現代、人が共同体に吸い寄せられ絡め取られている。不気味に液状化する現代社会で、「救いの共同体」を構築しようと蠢動する人間の欲望… 共同体の救済と病理 [著]長崎浩 もっと自由を、もっと共同性を。この救済共同体への渇望が大衆を駆動し、歴史を動かすモメンタムに転化するとき、どのような悲惨な逆ユートピアが待ち構えているのか。この点を明らかにするのが書の狙いだ。全共闘運動の高揚期に『叛乱(はんらん)論』でデビューした著者のラディカリズムは、いまも健在である。オウム真理教や人民寺院、新左翼の前衛組織やロシア革命の労農兵士代表ソビエト、さらにパリ・コミューンに至るまで、さまざまな衣装をまとった共同体を、フロイトの集団心理学を手がかりに古代ユダヤ教罪悪共同体や受苦共同体とダブらせて論じる知的な力業には驚くばかりだ。 それにしても、なぜフロイトなのか。著者のみ

    「共同体の救済と病理」書評 革命への熱狂が生む、逆ユートピアの悲惨|好書好日
  • 官僚制 民主主義の敵なのか友なのか|好書好日

    左から佐川宣寿・前国税庁長官=18年3月、柳瀬唯夫・元首相秘書官=18年5月、前川喜平・前文科事務次官=17年7月 官僚制を表す英語bureaucracyは「事務室」を意味するbureauに、「支配」「権力」を意味するcracyが結合してできている。この語が生まれたのは18世紀中ごろのフランスで、基的に否定的な意味だった。杓子定規(しゃくしじょうぎ)で、融通がきかず、血が通っていない、という役所への悪いイメージはすでにこのときから始まっている。バルザックも『役人の生理学』で「書類作り以外になんの能力もない人間」と書いている。 この語源的な説明に違和感を持つ読者も多いかもしれない。城山三郎『官僚たちの夏』(新潮文庫・637円)に描かれているような官僚像のせいだろう。支持基盤の個別利益に配慮せざるをえない代議士に対して、上から目線で「国益」を語る高潔なエリート。この官僚イメージは高度経済成長

    官僚制 民主主義の敵なのか友なのか|好書好日
  • 「ぎりぎり論文マニュアル」著者が語る、論文を書き損じて分かった人生の楽しさ|じんぶん堂

    卒論の作成・提出……、まだ間に合う!? 書籍情報はこちら 重ねる失敗は無駄ではない 料理を覚える上で大事なのは失敗することだ。練習も修業も失敗の繰り返しの連続である。そしてその失敗の経験が身を助けるのである。この教訓こそ、『ぎりぎり合格への論文マニュアル』の根精神である。失敗して自慢するな!と自分でも言いたくなるのだが、大事なのはそういうことだ。 私は卒論を書くのに失敗して、大学を卒業し損ね、大学院に落ちた。その後、修士論文でも失敗し、無職の一年を過ごした。借金を背負った。この失敗の原因の根原因は論文執筆法を一冊も読まないで卒論を書いたことである。 書き方がよく分からないので、箇条書きにした。そうしたら、「これでは論文ではありません」と突き返され、落第した。「知りませんでした」という言い訳は通用しない。あの頃は、卒論ゼミも論文指導もなかったし、途中まで書いて、指導教官に見てもらうことは

    「ぎりぎり論文マニュアル」著者が語る、論文を書き損じて分かった人生の楽しさ|じんぶん堂
  • なぜ「女性哲学者」は非業の死をとげたか 『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』|じんぶん堂

    世界で最も有名な「新プラトン主義者」の実像を描く! エドワード・J・ワッツ著『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』(白水社刊)は、男性社会を生きた女性数学・哲学者の評伝。「アレクサンドリアのヒュパティア」を政治社会階層・宗教と暴力との関係から解説。 書籍情報はこちら チャールズ・ウィリアム・ミッチェル《ヒュパティア》より 大斎の殺人 紀元後5世紀のローマ帝国は、市民たちが複雑な幻想を受け入れることを当てにしていた。人々は、自分たちが生きている国やその国を運営している人間には、逆らいがたい権力があるものと信じさせられていた。帝国官僚と地方エリートと教会指導者と帝国軍将校は結託して、自らが掌握した公共の秩序がいかに脆もろいものであるかを、脅迫と報酬と個人的な人脈によってひた隠しにしながら、帝国の諸都市を統御していた。エリートによる統制という幻想の維持に役立ったのはじつに些細なことで

    なぜ「女性哲学者」は非業の死をとげたか 『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』|じんぶん堂
  • スピノザの自然主義プログラムとは何か?(前編):必然主義と目的論批判|じんぶん堂

    記事:春秋社 Spinoza, Excommunicated by Samuel Hirszenberg, 1907 書籍情報はこちら 自然主義プログラム――自由意志も目的論もない世界の中で人間を理解する そもそも「スピノザの自然主義プログラム」とは何か。これはスピノザの言葉ではなく僕なりの命名だが、スピノザ思想の中に見いだされる、次の2点を柱とする構想である。 (1)自由意志概念の否定を伴う決定論または必然主義、およびその帰結としての唯現実論(アクチュアリズム) (2)目的論的自然観の徹底的な否定 この構想の背景として想定しているのは、17世紀科学革命による、近代的な力学的自然観の成立である。近代力学は、中世までの目的論的自然観を退け、「目的」とは無関係な法則に従って運動する微粒子の総体として自然を説明する。 このような自然観を踏まえた上でスピノザは、目的なき自然法則を乗り越えられるよう

    スピノザの自然主義プログラムとは何か?(前編):必然主義と目的論批判|じんぶん堂
  • 土井善晴さん「くらしのための料理学」 料理は人間が健全に生きる土台、「一汁一菜」がつなぐ持続可能な循環|好書好日

    土井善晴さん=北原千恵美撮影 土井善晴(どい・よしはる) 料理研究家、十文字女子大学招聘教授、東大先端科学研究センター客員研究員 1957年、大阪生まれ。父は日の家庭料理の第一人者、土井勝。スイス、フランスでフランス料理を学び、帰国後は老舗料理店の大阪「味吉兆」で日料理を修行。土井勝料理学校講師を経て、92年に「おいしいもの研究所」を設立。「きょうの料理」(Eテレ)や「おかずのクッキング」(テレビ朝日系)などの講師を務め、『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)、『土井善晴の素材のレシピ』(テレビ朝日)、『料理と利他』(ミシマ社)など著書多数。 Twitter:@doiyoshiharu 普通の暮らしにある家庭料理の美しさ ――土井さんは、まずフランス料理を学び、日料理店での修行を経て、家庭料理の道へと進まれています。料理への向き合い方や料理観はどう変わっていきましたか? 20

    土井善晴さん「くらしのための料理学」 料理は人間が健全に生きる土台、「一汁一菜」がつなぐ持続可能な循環|好書好日
  • 「ドラえもん論」杉田俊介さんインタビュー 歴代作品から読み解く、のび太の「弱さ」が愛される理由|好書好日

    文:若林良、写真:斉藤順子 杉田俊介(すぎた・しゅんすけ)批評家 1975年生まれ。神奈川県出身。労働問題やサブカルチャーについての論考を数多く執筆。著書に『フリーターにとって「自由」とは何か』(人文書院)、『宮崎駿論 神々と子どもたちの物語』(NHK出版)、『ジョジョ論』(作品社)など。2019年、ヘイト問題を考える雑誌『対抗言論』(法政大学出版局)を創刊。 とにかく怖かった「のび太の海底鬼岩城」 ――杉田さんと「ドラえもん」の出会いはいつ頃でしたか。 小学校3年生に上がる頃、映画4作目の「のび太の海底鬼岩城」を見たことが大きいですね。それ以前もテレビで見てはいましたけど、映画のインパクトがとにかく強かったんです。 ――どのような感想を抱かれたのでしょうか。 怖かった。その一言です。テレビで見る「ドラえもん」とは全然違うテイストでした。スネ夫とジャイアンが海底で、テキオー灯(どのような世

    「ドラえもん論」杉田俊介さんインタビュー 歴代作品から読み解く、のび太の「弱さ」が愛される理由|好書好日
  • 「買春する帝国」書評 自由奪う事実上の奴隷制を解明|好書好日

    買春する帝国 日軍「慰安婦」問題の基底 (シリーズ日の中の世界史) 著者:吉見義明 出版社:岩波書店 ジャンル:歴史・地理・民俗 買春する帝国 日軍「慰安婦」問題の基底 [著]吉見義明 慰安婦のことを知らない若い人が増えている。中学の歴史教科書から慰安婦の記述がほぼ消えたためだ。歴史修正主義的な言説があふれる今、年長者の認識も怪しい。あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」の件も歴史認識の問題と当然関係しよう。 書はそんな心許(こころもと)ない状態のこの国で、私たちが知っておくべき日の性買売の実態を、最新の研究成果もふまえて広く深く解き明かした労作である。対象は幕末から売春防止法の施行(1958年)まで。議論するならこのくらいは押さえておこうよ、という最低限のラインである。 国際社会へのデビューに際し、1872年、明治政府は人身取引を禁止する芸娼妓(しょうぎ)解放令を出す。

    「買春する帝国」書評 自由奪う事実上の奴隷制を解明|好書好日
  • 村田沙耶香「地球星人」書評 女性の生きづらさ、鋭く問う|好書好日

    地球星人なんて、ポハピピンポボピア星人が作り上げた幻想なんじゃないかな−。なにがあってもいきのびること。恋人と誓った魔法少女は、世界=人間工場と対峙する! 『新潮』掲載を… 地球星人 [著]村田沙耶香 生き延びるとは、こんなに困難なことなのか。小学生の奈月には味方がいない。いつもいら立っている母親は彼女を出来損ないとののしり、学校でうまくやれない姉も奈月にあたる。なぜか。家族のなかでいちばん弱い彼女をストレスのはけ口にするためだ。奈月は思う。「私はたぶん、この家のゴミ箱なのだ」 自分を保つために、奈月はぬいぐるみのピュートとの世界を空想する。その物語を共有してくれるのは、長野の田舎にある祖母の家で夏休みに会ういとこの由宇だけだ。彼もまた、離婚の末に自殺未遂を起こした母親との困難な関係を抱えていた。2人は自分たちが他の惑星から来た、というお話を作って支え合う。 だがこの均衡を破る出来事が起こ

    村田沙耶香「地球星人」書評 女性の生きづらさ、鋭く問う|好書好日
  • 奇書「ドグラ・マグラ」の原風景 夢野久作がデビュー前に執筆した童話71編|好書好日

    昭和初期、福岡を拠点に活躍した探偵小説家・夢野久作。その全貌を伝える『定 夢野久作全集』(国書刊行会)が刊行中だ。この5月に発売されたばかりの第6巻のサブタイトルは【童話】。久作が探偵作家としてデビューする前、地元の新聞などに別名義で執筆していた創作童話71編を収録している。 久作が童話を旺盛に手がけていたのは、大正時代後半である。ちょうど鈴木三重吉の雑誌『赤い鳥』が創刊され、日の児童文学に新しい波が訪れていた時期と重なっているが、強靱なイマジネーションと、ナンセンスな笑い、オノマトペを多用した独特の文体を備えた久作の童話は、すでにオリジナルな世界を確立していた。たとえば「オシヤベリ姫」「人が喰べ度い」「豚吉とヒヨロ子」とタイトルを並べてみれば、そのユニークさがなんとなく伝わるだろうか。 長年の久作ファンとして数ページの小品にも捨てがたい魅力を感じるが、久作童話の代表作といえばやはり、

    奇書「ドグラ・マグラ」の原風景 夢野久作がデビュー前に執筆した童話71編|好書好日
  • http://book.asahi.com/ebook/master/2013072500005.html

  • 「褐色の世界史」書評 プロジェクトの出現と崩壊追う|好書好日

    褐色の世界史―第三世界とはなにか [著]ヴィジャイ・プラシャド 「第三世界」という言葉は今も使われるが、ほとんど途上国や経済的後進国という意味でしかない。書の序文冒頭に、次のことばがある。《第三世界は場所ではない。プロジェクトである》。このプロジェクトはたんに、これまで植民地下にあった諸国が独立し、西洋先進国と並ぶようになるということではない。それまで前近代的として否定されてきたものを高次元で回復することによって、西洋先進国文明の限界を乗り越えるというものである。このような理念がなくなれば、第三世界は消滅するほかない。書は、この理念がいかにして出現し、且(か)つ消えていったかを丹念に追跡するものである。 書から、私は第三世界に関する基礎的な史実を学んだ。その中でも興味深いのは、第三世界の運動が国連を中心にしたということである。つまり、途上国の連合体は、大国に従属せず、国連を通して力を

    「褐色の世界史」書評 プロジェクトの出現と崩壊追う|好書好日
  • 本の記事 : 高崎のジュンク堂撤退 大型店が競合、大手でも脱落 - 長屋護 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    JR高崎駅前の「ジュンク堂書店高崎店」が3日、閉店した。専門書の品ぞろえが強みの大手が、「蔵書に見合った売り上げにならなかった」(同社営業部)として、拡張から3年で撤退を決めた。雑誌・書籍の国内市場は8年連続前年割れ。書店数が減る一方、店舗の大型化が進む県内では、大手間の競争も激しさを増している。 「永らくお世話になりました」。高崎駅西口から徒歩1分。「高崎ビブレ」6階の店内に、張り紙が貼られていた。2日は営業時間中もの撤去作業が進められ、空の棚が目立った。 2008年、コミック専門店として7階に開店。10年に6階にも拡張し、店舗面積約2千平方メートルの総合書店とした。専門書約20万冊を含む約50万冊の品ぞろえは、県内有数だった。 ただ、ビブレの他のテナントは若者のファッション専門店などが多い。専門書の品ぞろえに定評があるジュンク堂にとって、客層の面での相乗効果は、期待しにくい立地だっ

    本の記事 : 高崎のジュンク堂撤退 大型店が競合、大手でも脱落 - 長屋護 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
  • 「万引きの文化史」書評 れっきとした犯罪なのに|好書好日

    万引きの文化史 (ヒストリカル・スタディーズ) 著者:レイチェル・シュタイア 出版社:太田出版 ジャンル:社会・時事・政治・行政 なぜ人は万引きをするのか? どういった人が、どんな理由で万引きという犯行におよぶのだろうか? 万引きに端を発するさまざまな人生の物語を追うと共に、万引きの病理と対応策を考… 万引きの文化史 [著]レイチェル・シュタイア 古書店の店員になった直後、万引きを目撃した。あの時の衝撃を、今も忘れない。三つ揃(ぞろ)いの紳士が当たり前のように、雑誌を背広の内側に忍ばせたのだ。そのまま店を出ていくのである。私は足がふるえて、声をかけられなかった。 その後、何十件も遭遇した。もはや、ひるむこともない。咎(とが)めると、冗談だよ、と照れ笑いする者、金を払えばいいだろう、と開き直る者、いろいろだった。捕まえた方が、何だか後ろめたくなる。万引きは、実に妙な犯罪だった。 映画「ティフ

    「万引きの文化史」書評 れっきとした犯罪なのに|好書好日
  • インタビュー : ラブホから普通が見えた 金益見「性愛空間の文化史」 - 高久潤 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト

    使ったことがあるかは別にして誰もが存在は知っている「ラブホテル」。その通史をまとめた『性愛空間の文化史』を、神戸学院大非常勤講師の金益見さん(33)が出版した。全国のホテルの外観や内部の実情を取り上げた『ラブホテル進化論』の発表から4年ぶりの著作だ。 出合茶屋や連れ込み旅館、ブティックホテル、ラブホテル、最近では縮めて「ラブホ」と表記される日独自の「性愛空間」のルーツを江戸時代後期までさかのぼった。 かつて使われた「温泉マーク」が、いつからこの空間を意味するようになったのか。城や船という「デラックスな」外観が生まれた背景には何があるのか。図書館で古い新聞や雑誌をめくって証拠を探した。「タダでいいので」と言って、アシスタントとして雑誌の取材に同行して人脈を築いた。北海道から九州まで、各地のホテル関係者にインタビュー。訪れたホテルの部屋は千以上に上る。 「とっておきラブホ」 歌手デビューを目

    インタビュー : ラブホから普通が見えた 金益見「性愛空間の文化史」 - 高久潤 | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト