それでもゼレンスキーによるドンバス和平の模索は続いた。2020年7月、ウクライナ国防省情報総局(GUR)とSBUが数年かけて準備・実行した「民間軍事会社ワグネル」兵士捕獲作戦は、ゼレンスキー側近がロシアとの和平交渉へ与えうる影響に配慮して作戦を1週間延期したことで計画が露見して失敗した。 交渉は膠着し、ゼレンスキーの対露政策は、前政権と似かよったものになっていく。そして昨年2月の政権転覆の試みを目の当たりにして、ゼレンスキーは、プーチンの目標は、そもそもドンバス紛争の解決ではなく、ウクライナの属国化だと最終的確証を得たのである。 一方、プーチンの誤算は、「弱い」ゼレンスキーが、キーウを離れることなく、国民に祖国防衛を、欧米諸国に武器供与を呼びかけたことであった。 反転攻勢と選挙の行方 ロシアでは来年3月に形式的な大統領選がある。ロシア大統領府は、プーチン出馬を前提にさまざまなシナリオの検討