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ブックマーク / agora-web.jp (13)

  • マイナス金利政策により予想されること

    商品の現物価格と先物価格の関係を説明する際に、コンビニエンス・イールド(利便性の利得)という概念が使われる。Hatena Keywordの説明を引用すると、コンビニエンス・イールドとは「現物を保有することによって得られるメリット」のことである。「具体的には、一時的な品不足などで利益を得る可能性や生産を継続することによるメリットなどが考えられる」。そして「現物を保有する代わりに先物を買うことで、保管コストや金利コストを負担せずにすむが、現物を保有することで得られるメリットは失う」ことになる。 預金と現金を比較した場合にも、ある種のコンビニエンス・イールド(利便性の利得)が預金にはあるといえる。現金は、少額の決済にはきわめて便利な手段である。しかし、多額の価値保蔵手段としてみたときには、利便性に劣る面がある。現金には盗難のリスクが伴い、多額になるとかさばり、保管に大きなスペースを必要とする。安

    マイナス金利政策により予想されること
  • 下流老人になりたくなければ

    私は老人福祉に関わる仕事をしている。 老人福祉とはまず金の問題である。利用者はいくらかかるかを気にするし、少しでも安く、できれば無料の施設に入りたいと思っている。ところが、適切な福祉の利用方法を助言する人が身近にいないために、無駄な金を使っていたり、来利用できるサービスにたどり着かない人がたくさんいる。 世間に流通している、老後不安を煽る情報の大半は、「老後のために貯蓄せよ、保険に加入せよ、投資せよ、家を買え」という内容であり、福祉の利用方法をまじめに検討していない。 書に登場する「下流老人」のケースも、すべて、「福祉の利用手続きをしない、あるいは知らないので、貧困に苦しんでいる人々」である。この場合における福祉とは、雇用保険、生活保護、障害年金、高額療養費制度、介護保険である。老人人の家計を他の家族から分離する「世帯分離」も有用だ。 現代日の福祉の問題は、保障される生活水準が低い

    下流老人になりたくなければ
    nizimeta
    nizimeta 2015/07/16
  • 見せかけの回帰(かなり技術的)

    高橋洋一氏が、「金融政策には効果ラグがあり、政策を行ってから2年程度のラグで格的な効果が発揮できる」と主張する根拠は、たぶんこのディスカッション・ペーパー(PDF)のp.13の図9に示されたような分析だと思われる。しかし、少なくともこの分析は、時系列データの取り扱いに関する基的な理解を欠いたものだと言わざるをえない(グローバルセキュリティ研究所にも、もう少ししっかりしてほしい)。 高橋氏は、私とほぼ同じ世代なので、時系列分析の新たな発展が普及して広く知られるようになる前に大学(院)教育を終わってしまっているので、その後に関連した勉強をしていないと無理解なままで過ごすことになってしまいがちである。私も、さほど時系列分析を勉強しているとは言いがたいので、理解に怪しいところがあるかも知れないが、標準的な回帰分析はデータが定常であることを前提としている。しかるに、非定常な変数どうしを回帰させる

    見せかけの回帰(かなり技術的)
  • 貿易赤字拡大にみる日本経済の問題点

    10月21日に発表された平成25年9月分貿易統計(速報,財務省)には驚きました。貿易指数の輸出「数量」伸び率(対前年)が,地域別でみて, 世界 -1.9% US -1.2% EU -2.1% アジア -4.0% と軒並みマイナスだったからです。先月は対EU以外はプラスだったため予想外でした。昨年の9月と言えば円高の底(78.17円/ドル,月中平均)で,ここ最近で最も輸出に不利な状況でした。その時よりも落ち込んだのです。(速報なので変わる可能性もあります。) 去年9月と比べて約20円の円安となっているため,円建てでの輸出「金額」の対前年伸び率は 世界 +11.5% US +18.8% EU +14.3% アジア +8.2% とプラスになっています。けれども,これは円高調整の効果を表しているに過ぎません。いま,日経済にとって重要なのは数量です。数量が増えなければ,生産増加のための設備投資も雇

    貿易赤字拡大にみる日本経済の問題点
  • 量的緩和:英国の経験

    前の記事では、日米の非伝統的金融政策について述べたが、黒田新体制の下で日銀行が新たに行おうとしている金融緩和は、むしろ英国で実施されているものと類似性が高いものになるのではないかと思われる。そこで、英国の経験についても少し整理しておきたい。英国の中央銀行であるイングランド銀行は、前回述べた米国連邦準備とは異なって、その政策を自ら「量的緩和(Quantitative Easing)」と呼んでいる。 リーマンショック以後、英国でも金融緩和が進められてきたが、2009年3月に、政策金利を0.5%まで低下させたところで、実務上はこれ以上政策金利を下げることはできないとして、同時に「量的緩和のための資産買い取りプログラム(Quantitative Easing Asset Purchase Programme)」を開始することが決定された。その内容は、2009年の3月から11月の間に総額2000億

    量的緩和:英国の経験
    nizimeta
    nizimeta 2013/04/06
    “資産価格と為替レートへの影響、および期待へのより広い効果を通じて、効果をもつとされている。決定的な伝播経路があるわけではないが、様々な経路を通じて効くはずだという話である”
  • 新たな量的緩和の効果

    黒田新体制になって最初の金融政策決定会合で打ち出された緩和策は、さすがと思わせる「気度」を示したものであった。これが、人々や企業の「期待」という掴みがたいものにどのような影響を及ぼすかは、率直にいって私にはよく分からない。しかし、もう少し実体があると思われるレベルでの効果については、多少は推論してみることが可能なので、それについて述べておきたい。 資金の供給量を2倍にするとか、ベースマネーの量を2倍にするとかいわれると、錯覚しやすいと思われるが、長期国債を買い上げる代わりにベースマネーが供給されるわけだから、ベースマネーが増える分だけ民間銀行が保有する長期国債の額は減っている。すなわち、別に民間銀行(ましてや家計や企業)の購買力が増加するわけでもなんでもない。民間銀行の保有する金融資産の内訳が変更されることになるだけである。民間銀行の保有する金融資産の総額は一定のままである。 増加を予定

    新たな量的緩和の効果
    nizimeta
    nizimeta 2013/04/06
    “リスク負担キャパシティの復元でもあるので、後者の面と相まって、収益を求めて(search for yieldで)、よりリスクをとった運用を行う動きが生じる可能性がある。このことは、やはり資産価格の上昇要因となろう”
  • 量的緩和の分類学(解説)

    非伝統的な金融政策は、共通して中央銀行のバランスシート規模の膨張を伴うことから、一律に「量的緩和(Quantitative Easing)」と呼ばれることが少なくない。しかし、より詳細にみると、これまでに実施された非伝統的金融政策はそれぞれに固有の特徴をもっており、そのすべてが同一の内容からなるものではない。そして、それぞれの特徴を識別することなしに、何が効いたか何が効かなかったのかを論じることはできない。 そこで、以前に書いたことの繰り返しになる部分もあるけれども、日米でこれまで実施された非伝統的金融政策について、それぞれの特徴を整理しておきたい。 伝統的金融政策が「金利政策」であるのに対して、実際の非伝統的金融政策は中央銀行自身のバランスシート(B/S)を活用する「バランスシート政策」だといえる。ただし、バランスシートには負債側と資産側の2面があり、いずれに力点が置かれているのかを区別

    量的緩和の分類学(解説)
    nizimeta
    nizimeta 2013/03/17
    “米国における非伝統的な金融政策では、リスク・プレミアムや長期金利という価格変数に注目が置かれており、準備預金やベースマネーといった量そのものがターゲットとされたことはない”
  • 「量的緩和」という物語

    率直にいって、マクロ経済学を学んだだけでは金融政策を理解するために十分ではないと思われる。金融政策のトランスミッション(伝播)メカニズムを正しく理解するためには、準備預金制度や短期金融市場などの金融政策に関連する制度的機構についての金融論的な知識も必要だからである。 とはいっても、通常の議論のためには勘所となるポイントさえ押さえていればよいのであって、分かってしまえばそれほど難しい話ではない。とりあえず押さえてほしいポイントは、金融政策は中央銀行と民間銀行の間の取引を通じてしか遂行され得ないというところである。この点が必ずしも理解されていないことから、無用な混乱が生じているきらいがあるので、この機会にできるだけやさしく説明しておきたい。 貸金業者と銀行の大きな違いは、貸金業者は借り手に現金を渡すかたちをとるのに対して、銀行は自行に設けられた借り手の預金口座に振り込むかたちをとる(その後、借

    「量的緩和」という物語
    nizimeta
    nizimeta 2013/03/16
    “超過準備預金残高が増加している場合には、日銀が緩和策をとったにもかかわらず、資金が世の中に出ていかない(それゆえ金融緩和が進展していない)ということ”
  • 事実と印象の一例

    以前にも一度述べたことがあるが、同じ事実・統計データでも、見せ方によってずいぶんと異なった印象を与えるものである。したがって、あらゆる現象に関して、多面的に検証し、それに関する主張の頑健性をチェックする必要がある。一例として、先進各国の中央銀行のバランスシート規模をとりあげてみる。 次の図は、日(8月23日)の『日経済新聞』朝刊の星岳雄さんとA・カシャップ氏の「経済教室」の記事から引用したものである。この図から、「世界金融危機の後、思い切った緩和政策をとった他国の中央銀行と相変わらず消極的だった日銀の差は顕著だ」と述べられている。 他方、次の図は、同じ『日経済新聞』の8月19日(日曜日)朝刊の記事から引用した図である。また、ほとんど同じ内容の図が、セントルイス連銀の『レビュー』に掲載されたPIMCOのモハメド・エルエリアンの記事(pdfファイル)の中にも掲載されていたので、合わせて引

    事実と印象の一例
    nizimeta
    nizimeta 2013/01/31
    “緩和の程度は、まだゼロになっていない長期金利とかリスク資産の利回り(のうち、リスク・プレミアム部分)がどれだけ下がったかで判断されるべきものです。問題は「量」ではなく、やはり「金利」なのです”
  • 相関と因果関係

    のマネタリーベースの残高は、2006年3月に日銀行が量的緩和政策を終了した後、一旦は減少するが、2007年以降をみると再び増加の基調にある。図に示したように、リーマンショックに際して、直接に金融危機に陥った米欧ほどではないが、一段と増加し、東日大震災時には急増している。その後は変動しつつも、120兆円前後の規模を維持している。 他方、普通国債と物価連動国債の利回り格差から計算されるブレーク・イーブン・インフレ率は、リーマンショック後、大きく下落した後、回復基調にある。したがって、リーマンショック以降の時期については、マネタリーベース残高とブレーク・イーブン・インフレ率の間には、正の相関が見られることになる。ともに増加傾向にあったから、当然である。 しかし、こうした正の相関がみられたから、「マネタリーベースを増やせば予想インフレ率(日の現状で、ブレーク・イーブン・インフレ率が予想イ

    相関と因果関係
  • 太陽光発電の強制買い取り価格42円/kWh、20年間保証の異常

    経済産業省は25日、太陽光発電の買い取り制度が導入される7月に向け、「調達価格等算定委員会」を開き、メガソーラーなど大規模太陽光発電の買い取り価格を1kWh当たり42円とする委員長案をまとめた。さらに大規模なメガソーラーの場合、この価格を20年間保証するという。国の補助金制度を合わせると実質48円/kWhにもなる。メガソーラー事業への進出に意欲を見せていたソフトバンクの孫正義氏らのいい値がほぼ通ったことになる。筆者は、これは極めて異常な事態で、今後、日に大きな禍根を残すと考えている。 まず、石炭火力や原子力などの発電単価は5~6円/kWh程度で、これだけでこの買取価格が来の価格の10倍近いことがわかる。しかし、実際はもっと高い。なぜならば、石炭火力や原子力は、発電量をコントロールでき予測可能なため、発電した電気のほぼ全てを使えるが、いつどれだけ発電されるかわからない太陽光は、電気が作ら

  • インフレは「逆進性のある税」の性質をもつ

    2011年7月1日、「社会保障・税一体改革成案」の閣議報告が行われた。この改革案の決定過程では、当初、目玉である消費税を2015年までに10%まで段階的に引き上げることを検討していたが、政権内の意見調整がつかず、最終的には、「2010年代半ばまでに段階的に10%まで引き上げる」という表現でまとまった。 政権内の意見調整がつかない背景には、いくつかの理由が考えられるが、その中の一つの理由として、インフレで政府債務の一部を帳消しにしようとする政治的思惑も関係しているように思われる。 だが、経済学では、「ノー・フリーランチ(ただ飯はない)」という言葉があるように、政府債務の償却のためのインフレがコストなしであるとは限らない。 むしろ、「インフレ税(Inflation Tax)」という概念があるように、インフレは税の一種であり、最近の研究では、インフレ税は「逆進性のある税」としての性質をもつことが

    インフレは「逆進性のある税」の性質をもつ
  • クラウアーの二重決定仮説(*ややテクニカル)

    近頃、ときどき「ワルラス法則」という言葉を耳にすることがあって、懐かしい気がするとともに、過去の様々な議論の成果がほとんど継承されていないことに残念な思いをしている。私が大学院生をしていた1970年代の後半は、ワルラス的な一般均衡論のパラダイムが(完成したがゆえに)活力を失い、それに代わって非ワルラス的経済学(Non-Walrasian economics)と呼ばれるような考え方が隆盛してきた時期だった。非ワルラス的経済学をめぐる議論の中には、ケインズ経済学の再解釈やそのミクロ経済学的基礎を問う議論も当然に含まれていた。 ケインズ経済学のミクロ経済学的基礎を考えるとすると、供給が需要を生むという「セイの法則」が成立することはないとしたケインズ的世界において、「ワルラス法則」をどう理解するかということが否応なしに問題とならざるを得ない。貨幣を含まない(あるいは、あらゆる財が実質的に貨幣として

    クラウアーの二重決定仮説(*ややテクニカル)
    nizimeta
    nizimeta 2011/02/02
    “価格が硬直的で、数量(所得)制約が存在するケインズ的世界では、予算式だけが制約条件ではない。各経済主体は、所得制約も考慮に入れて意志決定しなければならない(このことが、「二重決定」の意)”
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