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ブックマーク / honz.jp (11)

  • 山本義隆著『ボーアとアインシュタインに量子を読む』を読む - HONZ

    ボーアとアインシュタインに量子を読む――量子物理学の原理をめぐって 作者: 山義隆 出版社: みすず書房 発売日: 2022/9/12 山義隆さんといえば、毎日出版文化賞と大仏次郎賞をダブル受賞した『磁力と重力の発見』をはじめ、『十六世紀文化革命』や『世界の見方の転換』など、浩瀚な科学史の著作がまず頭に浮かぶ。だから、このたびの『ボーアとアインシュタインに量子を読む』も、量子物理学の歴史なのだろうと予想して手に取った。 ところがページを開くなり、その予想はハズレたことを知った。山さんは「はじめに」の冒頭で、こう宣言していたのだ。 書は、物理学の書です。記述は歴史的でもあり、時に哲学者の言説にも触れていますが、しかし量子力学史ではなく、ましてや科学哲学の書でもなく、基的には量子物理学の原理的な理解のための書です。 「あ、そうなんだ。物理学のなんだ」と、わたしは頭を切り替えてペ

    山本義隆著『ボーアとアインシュタインに量子を読む』を読む - HONZ
  • 『宇宙の果てまで離れていても、つながっている 量子の非局所性から「空間のない最新宇宙像」へ』 - HONZ

    『宇宙の果てまで離れていても、つながっている 量子の非局所性から「空間のない最新宇宙像」へ』編集部解説 この世界から<空間>が消えたなら? 想像してみよう。「もし、この世界から<空間>が消えてしまったら?」・・・。空間がなければ、距離もない。こちらもあちらもない世界ーーあらゆるものは宇宙の果てまで離れていても、つながっているだろう。当然、あなたとわたしもなく、モノ固有の境界も性質もなくなる。光速の壁は超えられて、時間すら反転可能かも知れない。ごった煮の超高エネルギーの闇鍋のような世界だ。 こんな恐るべき「無-空」が、じつは私たちのすぐ身近に、いたるところにあるとしたら? 最新の宇宙論は、こうした認識のほうがリアルであると示唆する。いったいどういうことだろう。 物質・エネルギーの最小レベルは、「量子」と呼ばれる。私たちの身体から宇宙の星々まで、あらゆるものは突き詰めれば量子から成っている。こ

    『宇宙の果てまで離れていても、つながっている 量子の非局所性から「空間のない最新宇宙像」へ』 - HONZ
    nizimeta
    nizimeta 2021/10/16
  • 「深海生物テヅルモヅルの謎を追え!系統分類から進化を探る」 分類学に心酔した男の圧倒的成長に迫る - HONZ

    「テヅルモヅル」という生物をご存知だろうか。体の中心から五の腕を伸ばし、その各々の腕を枝分かれさせ、まるで触手のようにうねうねと動かしながら海水中のプランクトンを捕獲し、それらを栄養源として生息している動物だ。腕を広げると、大きなものでは1メートルを超える圧倒的な存在感を持つモヅルもいるようだ.その様子にちなんで、一部の種は学名にギリシャ神話の「ゴルゴン」を冠している。見た目・形ともに異彩を放つこのテヅルモヅルだが、研究者の数が限られていることもあり、未だ生殖発生や生活史などの基的な生態すら明らかにされていない。 書は、そんな謎多きテヅルモヅルを研究する茨城大学の岡西政典助教が綴る研究日誌である。珍しい生き物の研究者と聞くと、中高生時代からマニアックな知識を持ちピンポイントで研究室を選んだ人というイメージを持つかもしれないが、著者はそうではなかった。大学初年度はバイトとサークルに明け

    「深海生物テヅルモヅルの謎を追え!系統分類から進化を探る」 分類学に心酔した男の圧倒的成長に迫る - HONZ
    nizimeta
    nizimeta 2020/06/03
  • 『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』失敗と、どのように向き合うのか? - HONZ

    書の帯に、「英タイムズも絶賛!22ヵ国刊行の世界的ベストセラー、ついに日に上陸!」とあるので、その言葉に釣られて買ってみたが、確かにその通りの素晴らしい内容だった。 『失敗の科学』というタイトルからは、直ちに「失敗学」を連想する。これは、『失敗学のすすめ』 で有名な東京大学の畑村洋太郎名誉教授が提唱した新しい学問分野で、起きてしまった失敗に対し、責任追及のみに終始するのではなく、物理的・個人的な直接原因と背景的・組織的な根幹原因を併せて究明しようとする、安全工学に経営学などの要素を加味したものである。 しかしながら、書はこうした失敗の工学的メカニズムを明らかにするだけでなく、更に「人間が失敗から学んで進化を遂げるメカニズム」に焦点を当て、我々が進化を遂げて成功に至るカギは、「失敗とどう向き合うか」にあることを明らかにしている。 書では、まず航空業界と医学界という二つの業界を取り上げ

    『失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織』失敗と、どのように向き合うのか? - HONZ
  • 『私はすでに死んでいる──ゆがんだ〈自己〉を生みだす脳』 「自己」という感覚を脳はどのように構築しているのか - HONZ

    「私はもう死んでいる」(コタール症候群)、「この足は断じて自分の足ではない」(身体完全同一性障害)、「目の前にもうひとりの自分が立っていた」(ドッペルゲンガー)──わたしたちが「自己」と呼んでいるものに歪みを生じさせるような、驚くべき症例と経験の数々。書は、それらの症例と経験を手がかりとしながら、「自己とは何か」という大問題に迫る挑戦的な一書である。 挑戦的なだけではない。書は痺れるくらいにエキサイティングでもある。書をそれほどエキサイティングにしているのは、以下のふたつの要素だ。 まずひとつは、痛ましくも興味深い症例と経験のストーリー。書は、アルツハイマー病、統合失調症、自閉症といったよく耳にする疾患だけでなく、コタール症候群、離人症性障害、ドッペルゲンガーといったあまり知られていない疾患や経験もとりあげている。そして、それらの症例や経験をドラマチックに紹介する筋立てがじつによく

    『私はすでに死んでいる──ゆがんだ〈自己〉を生みだす脳』 「自己」という感覚を脳はどのように構築しているのか - HONZ
    nizimeta
    nizimeta 2018/02/19
    “統合失調症の一部の患者は自分で自分をくすぐることができる。もうおわかりだろう。それは、脳の予測メカニズムがうまく働かず、自他の行動の区別がつけられないから”
  • 『進化の教科書 第1巻 進化の歴史』 進化入門の決定版 - HONZ

    ハーバード大学やプリンストン大学をはじめ、全米200以上の大学で採用さている教科書『Evolution: Making Sense of Life』の邦訳3分冊の第1巻である。「教科書」といっても、書は議論の余地のない事実が淡々と積み上げられた退屈なものではない。原著者は『ウイルス・プラネット』等で知られる大人気サイエンスライターのカール・ジンマーと『動物たちの武器』のモンタナ大学教授ダグラス・J・エムレンであることからも分かるように、科学読み物としての楽しさを保ちながら、確かな知識を与えてくれる内容となっているのだ。またAmazon.comでは『Evolution』の価格は12,000円以上と高価だが、この第1巻はフルカラーの図を多く含みながら、1,680円(税別)だというのだから買うしかない。さらに、邦訳者の1人には、『化石の生物学者』の著者であり『ネアンデルタール人は私たちと交配し

    『進化の教科書 第1巻 進化の歴史』 進化入門の決定版 - HONZ
  • 『世界を破綻させた経済学者たち 許されざる七つの大罪』 - HONZ

    主流派経済学にひそむ欺瞞 2008年にアメリカで勃発した金融危機は、起きるべくして起きた出来事ではあった。 リスクが大きいローン債券を証券化した「デリバティブ」(金融派生商品)が主役を演じたバブル崩壊劇であったが、そんな危険物を扱う市場を透明にしようとする努力はクリントン政権時にわざわざ禁止されていた。個々のトレーダーたちは成功すれば莫大な報酬を得る一方、失敗してもダメージは比較して小さい仕組みだったから、おのずと高リスクの取引にのめり込んでいった。なかでも証券の値下がりリスクに備える保険商品であるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は住宅市場の過熱とともに住宅ローン担保証券の損失に対して広く用いられるようになっていたが、検査が厳格でなく、しかも発行者には準備金を積み立てる義務がなかったため、保険大手のAIGが保証金の

    『世界を破綻させた経済学者たち 許されざる七つの大罪』 - HONZ
    nizimeta
    nizimeta 2015/09/27
  • 『市場は物理法則で動く 経済学は物理学によってどう生まれ変わるのか?』 - HONZ

    市場均衡、合理的期待、効率的市場仮説…。これまでの経済思想では、もはや現実の世界を説明することは出来ない。物理学の視点から、経済学の常識へ果敢に切り込んだ『市場は物理法則で動く』。書の翻訳者解説と、物理経済学歴史的な経緯を紐解いたソニーCSL研究所・高安秀樹氏による解説記事「経済物理学の誕生と発展」を併せて掲載いたします。(HONZ編集部) 「『今回は違う(This time is different)』というのは、4つの単語からなる言葉の中で最も高くつくものだ」。これは、バリュー投資家として有名なジョン・テンプルトンが残した株式相場の格言である。 リーマン・ブラザーズ破綻直後の2008年9月、ある新聞コラムは、このテンプルトンの格言を引用してこう書いている。「テンプルトンが戒めた『今回は違う』という風潮は、バブル崩壊の初期に広がる。崩壊の怖さを知ってい

    『市場は物理法則で動く 経済学は物理学によってどう生まれ変わるのか?』 - HONZ
  • 『暴力の人類史』 人類史上もっとも平和な時代 - HONZ

    テロ、紛争、無差別殺人。世界は悲劇的なニュースで溢れている。人類は自らの手でその未来を閉ざしてしまうのではないか、と不安になる。ところが、著者スティーブン・ピンカーは大胆にもこう主張する。 長い歳月のあいだに人間の暴力は減少し、今日、私たちは人類が地上に出現して以来、最も平和な時代に暮らしているかもしれない にわかに信じがたいこの説を検証し、読者に確信させるためにピンカーは、人類の暴力の歴史を大量の統計データとともに振り返る。書が上下で1,300ページ超という並外れたボリュームで膨大な文献を引用しているのは、並外れた説の主張にはそれに見合った証拠を提出する必要があるからだ。しかし、ピンカーが「統計のない物語が盲目であるとするならば、物語のない統計は空疎である」と語るように、書はデータばかりが延々と続く退屈なものではない。持続的な暴力減少を示す圧倒的な事実の積み重ねとそのメカニズムに対す

    『暴力の人類史』 人類史上もっとも平和な時代 - HONZ
  • 『エピジェネティクス』見た目や性質は、氏か育ちか、だけじゃない? - HONZ

    HONZ内で「これを読んでいないと、まるで話についていけない」というのが存在する。中でも特に話題に上るのが、岩波科学ライブラリー『ハダカデバネズミ』『クマムシ?!』『フジツボ』の3冊。これらのが、同じ編集者によって手がけられていたことをご存知であっただろうか。それが今回寄稿いただいた伝説の編集者・塩田春香さんである。 ちなみに上記の3冊は変わった生き物を紹介していると同時に、変わった研究者を紹介する読み物としても他の追随を許さない。そんな彼女がターゲットにしたのが、我らが「エピジェネ仲野」。彼女の目に新刊『エピジェネティクス』、そして「エピジェネ仲野」はどのように映ったのだろうか。 エピジェネティクス――この耳慣れない言葉に、「私には関係ないもんね~」とスルーしかけている、そこのあなた! じつは「関係大アリ」、かもしれないのだ。 もし、あなたが罹るかもしれない、がんや糖尿病、心筋梗塞な

    『エピジェネティクス』見た目や性質は、氏か育ちか、だけじゃない? - HONZ
  • 『血盟団事件』 - 交わるはずのなかった二つの格差 - HONZ

    アルバイト店員が内輪向けのネタ画像をアップして炎上するなどの騒ぎが相次いでいる。この問題における一つの論点となっているのが、学歴の格差というものだ。「低学歴の世界」というセンセーショナルなフレーズとともに、多くの言葉が交わされているが、一昔前によく見かけた、都市と地方の格差という議論にもよく似た印象を受ける。 格差、就職難、ワーキングプア、社会からの孤立。これらの問題のルーツとなるようなものを辿っていくと、昭和初期に起きた一つの奇妙な事件に行き当たる。それが書で取り上げられている「血盟団事件」というものだ。 この事件は、日蓮主義者・井上日召に感化された若者たちが引き起こした連続テロ事件のことを指す。殺されたのは、元・大蔵大臣の井上準之助と三井財閥総帥の団琢磨。暗殺した小沼正、菱沼五郎の両者は、共に茨城県大洗周辺出身の幼馴染みの青年集団であり、日蓮宗の信仰を共にする仲間でもあった。 ※法廷

    『血盟団事件』 - 交わるはずのなかった二つの格差 - HONZ
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