都心で中堅の企画会社を経営するA社長は、「銀行員というのは本当に嫌なやつらだ」と 事あるごとに公言してはばからない。リーマン・ショック後に資金繰りが危うくなり、 取引のあったいくつかの銀行に、3000万円の借り入れを申し入れたことがあった。 しかしどこも応じるところはなく、やむなく優秀な社員たちを解雇して経営危機を乗り切った。 数年後、苦難を乗り越えてようやく新規案件が軌道に乗り始めたころ、かつて断りを入れてきた 銀行の担当者が電話をかけてきたという。 「3億借りて。使わないで利子つけて返せばいいから」 上司を連れてくるというので、しかたなくアポを受け入れると、銀縁のキザなメガネを掛け、 髪をなでつけた40代後半と思われる男性行員が現れた。彼がニヤニヤしながら言うには、 「いやあAさん、最近会社の調子が非常にいいようですね。どうです、そろそろウチからも お金を借りてもらえませんか?」 銀行