「○○は追える」「○○は追えない」――競馬好きが騎手を評価する際にしばしば使われる、この「追える」の意味を、果たして私たちは正確に理解しているだろうか。「本当に上手い騎手」とは、いったいどんな騎手なのか。現役時代、印象的な名騎乗の数々を披露してきた田原成貴氏が、自身の騎乗論と理想のジョッキー像を語った。(全3回の3回目/#1、#2へ) 「騎乗論に関しては、今は俯瞰して見ているから、現役時代は言葉にできなかったことを表現できるようになったり、乗らなくなって逆に気がつくことがあったりもしますよ」 そう話す田原成貴氏が騎手としてデビューしたのは、1978年3月のことだった。所属したのは栗東の谷八郎厩舎。初騎乗・初勝利で華々しいスタートを切った。 2年目の1979年に63勝を挙げて関西リーディングに。リードホーユーで八大競走初制覇を果たした1983年には104勝をマークし、初の全国リーディングを獲