『子供は自分の中に二十二の襞を持って生まれ、それらの襞を一つ一つ拡げることが、その人にとって最も重要なのだ』と書いたのは、フランスの詩人アンリ・ミショーでした。その襞はいたずらに露顕されることもなく、人目に触れずおごそかに秘蔵されているのでしょう。 この言葉を思い起こすとき、僕の脳裏には何故かいつも【自由】についての考えがよぎります。そこで今日は、ハーマン・メルヴィルの小説『バートルビー』を敷衍しながら、そのことについて少し書いてみようと思います。 主人公(バートルビー)はまず、ひたむきな勤勉さを請われて、書記として弁護士事務所で雇われるのですが、他の書記たちと比べてとにかく寡黙さが際立っています。でも彼は単に無口なわけじゃない。雇い主である弁護士や同僚に何を依頼されても、またどんな些細なことを促されても、彼の答えは決まっていつも、『できれば、しないほうがいいのですが…(I would p