大江健三郎のいくつかの講演を集めた新書。 刊行は1995年、大江がひとまず、作家としての生活に区切りをつけようとしていた時期にあたる。60歳となるこの年、『燃え上がる緑の木』を最後に、小説を書く筆を折り、スピノザ研究にその後の生涯をあてたいと考えていたのだ(実際のところ、翌年、1996年の武満徹の死を契機に、再度、小説に向っていくのだが)。 表題ともなっている本書冒頭の講演は、1994年のノーベル文学賞受賞記念講演のものである。 これと合わせ、1992年から1994年の間に行われた、9回の講演原稿が収録されている。 大まかには、文学論と、家族についてのものの2つに分けられる。 大江の長男、光は知的障害を持って生まれている。幼いころは言葉を発しなかったが、鳥の声をよく聞き分け、音感が優れていた。13歳のころから作曲をするようになり、CDも何枚かリリースされている。大江の作品とも深い関わりを持
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