東日本大震災で中央官庁は何ができ、またできなかったのか。道路、救援物資、燃料、仮設住宅、がれき処理。震災直後から被災者の生活に深くかかわる五つの課題を検証する。(肩書はすべて当時) 3月11日午後3時20分過ぎ、岩手県宮古市にある国土交通省の宮古維持出張所。市役所前のカメラがとらえた巨大津波がモニター画面に映し出された。防潮堤を越えて車や船を押し流していく。鈴木之(いたる)所長は現実かどうかも分からぬまま、上部組織の三陸国道事務所に連絡を入れようとした。だが光ケーブルの専用線まで断たれ、孤立状態に陥っていた。 危険な道を通行止めにしたが、津波が来たことを知らない住民が「なんで止めるんだ」と不審がる。モニターの画像をデジタルカメラで撮影してプリントし、ドライバーに1人ずつ配って知らせた。 午後10時、パトロールに出たまま連絡が取れなくなっていた職員が戻ってきた。同市田老地区の写真を見せられた