「正義」という言葉はどうにも扱いが難しい。言葉を使う人によって「正義」がもつニュアンスが違ったり、そのことによってすれ違いが起きたりするからだ。 正義という言葉に関連して、いまの日本でしばしば耳にするのは、たとえば「正義の暴走」や「正義は人それぞれ」といった表現である。こうした表現は、「正義」という概念を厳密に考えてきた研究者の目には、どのように映るのか。 このほど『今を生きる思想 ジョン・ロールズ』を上梓した学習院大学教授の玉手慎太郎さんが、政治哲学から見た「正義」について、いくつかの角度から語る。 日本での「正義」のイメージ ——「正義の暴走」という言葉が使われているのをときどき見かけます。 たとえば、コロナ禍のさい飲食店などの営業自粛を求めて攻撃をおこなう「自粛警察」があらわれましたが、これは「正義の暴走である」と言われました。 政治哲学や倫理学をご専門とする玉手さんからは、「正義の
![「正義は人それぞれ」という考え方、じつは「すごく危険」だって気づいていますか…?(玉手 慎太郎)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/282dae669fe47e8597998d366285d6e145007de0/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fgendai-m.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2F8%2F7%2F1200m%2Fimg_87242eccd17e64c69c0e78a7fc202152108880.jpg)