衛星通信や太陽電池、UNIX、C言語、光ファイバー通信は全て米ベル研究所から生まれた。どれ一つ取っても画期的な発明だが、ベル研が上げた桁外れな成果はトランジスタと情報理論だ。両者とも蒸気機関と並ぶ、社会に最も大きな影響を与えた発明だろう。 本書は気鋭のライターが雑誌記者の仕事の傍らで取り組んだ10年間にわたる綿密な取材を基に、ベル研の全歴史を描いた大著である。トランジスターの発明では嫉妬に燃えるウィリアム・ショックレーが部下のバーディーンらの業績を横取りしたことや、情報理論の創始者であるクロード・シャノンの変人ぶりなど興味深いエピソードが盛りだくさんだ。しかし、本書の真のテーマは『アイディア・ファクトリー』という原題が示す通り、「なぜベル研が数々の巨大なイノベーションを生み出せたのか」という謎の解明にある。 その答えの一つが、研究者の独創を生かしながら、一つの目的に向かって組織化していく研