「日本で発見されているだけでも数百種の粘菌がいるんですよ」 齋藤帆奈はそう言って、一冊の重厚な図鑑を取り出した。表題は『日本変形菌誌』。今年の4月に上梓されたばかりの粘菌学者・山本幸憲によるこの本は、これまでに日本で発見されてきたすべての粘菌を一望できるという1135ページに及ぶ大著である。 「粘菌って名前に菌がついてるけど実は菌類じゃないんですよね。むしろ菌を食べる存在なんです。それによって物質の分解を遅らせている。だから、ある種、粘菌は自然界のバランサー的な存在で、『あいだ』の存在でもあるんです。それでいうと靴もまた自分と地面との『あいだ』の存在ですよね。だから、今回は『あいだ』の存在同士をぶつけてみたんです」 粘菌とはとかく不可思議な存在で、環境に合わせて他の生物を捕食する動物のように振舞うこともあれば、時に一箇所に静座し植物のように振る舞うこともある。明治生まれの博物学者・南方熊楠
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