医薬と人類 医薬品というものは、どうにも不思議な代物だ。老若男女を問わず、薬のお世話になったことのない人間はまずいないだろう。しかしこれほど身近な存在でありながら、薬について詳しいことはほとんど何も知られていないに等しい。口から飲み込んだ小さな錠剤が、どのようにして患部に届いて痛みや炎症を鎮めるのか、簡単にでも説明できる人は相当に少ないだろう。 ちょっとした頭痛や腹痛から、命に関わるような重篤な病気の際まで、薬は我々の健康をサポートしてくれる頼もしい存在だ。糖尿病やエイズ、臓器移植をした患者など、薬なしでは命さえつなげない人も世にはたくさんいる。そこまででなくとも、常備薬なしでは出歩けないという人は多いだろう。筆者も頭痛持ちであるから、わずか数十分であのつらい痛みを消してくれる鎮痛剤の存在は、何よりも有難いと感じる。 それでいながら、薬のイメージは一般に悪いようだ。「薬害」「薬漬け」などな
![佐藤健太郎「歴史を変えた医薬品」第1回 病気と世界史(佐藤 健太郎)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/b8c870f87aa86cc7615db40d160000cab4ebf8ff/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fgendai-m.ismcdn.jp%2Fcommon%2Fgendai-shinsho%2Fimages%2Fmeta%2Fgs-ogp-image.png)