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ブックマーク / karakusaginga.blog76.fc2.com (14)

  • 唐草銀河:審判の日 告解 (192)

    Back Index Next 私が今度こそ真面目に言い返そうとすると、彼はその隙をついた。 「不満そうだね。君と会ってからこの一ヶ月、僕は、今までになく自分が生きてるって感じたよ。苦しくて切なくて、でもこの時間が永遠に続けばいいって無理なことを気で願うくらい心臓鳴らしてた。どうせ死ぬなら今がいいって、君といるときずっと、馬鹿みたいに思ったりした」 「ミズキさん……?」 彼は私を見つめ、君は思ってなかったって知ってるけどね、と小さく笑った。浅倉くんはゆるゆる頭をふっている。 「僕は姫香ちゃんに会って、自分がいつも誰かの身代わりをしてきたって思い知らされた。誰かの当に愛したい人の代わりになれなくて、そういう自分自身をもてあましていたことに改めて気づいたよ」 彼はそこで、浅倉くんを見た。 「僕は、姫香ちゃんの代わりを上手に出来なかったよね」 浅倉くんはふたりの視線を同時に受けて、あろうこと

    nuryouguda
    nuryouguda 2013/05/26
    明日以降はここから読む!佳境!しかしショーペンハウアーとニーチェが。いや、アリストテレスも読んでないのにもう30歳。無能極まりなく人生は短いピンクフロイド・Time
  • 唐草銀河:審判の日 告解 (191)

    Back Index Next たじろいでいると、浅倉くんがこちらを横目にした。だから家にいてって言ったんだよ、という顔をしているように見えた。そうだよね、ごめんなさいとここで吐き出せればよかったけど、当たり前にそういう余裕はない。頬にはミズキさんの視線が焼けつくようで怖い。怖いというか、痛い。 浅倉くんはがりがりと頭をかいて、ミズキさんへと頤をむける。 「オレは自力でつかまえたいんだけど」 「それは僕も同じ」 ちょっと待て。 「ふたりとも、私の意思はどうなるの?」 お互い顔を見合わせて、それは、とか、だってなあ、と口にした。 なんであなたがたはいつでもそんなに仲がいいの? 私が呆れた瞬間、ミズキさんが視線をずらし、言いたくないとでも言うように斜めをむいた。 「姫香ちゃん、初めて会ったときから君は、僕の行為に特別な意味を見出そうともしないくらい平然とそれを受け止めたよね」 そう、だっただろ

    nuryouguda
    nuryouguda 2013/05/25
    ここまで読んだ。我ながら、読書速度が遅い
  • 唐草銀河:たとえばそれをあなたが何と呼ぼうとも 1

    Back Index Next ~龍村茉莉のつぶやき  BL小説サイト『日曜日に僕は行くよ!』から抜粋~ 今週は1回しか更新できなくてゴメンナサイ! 来週にはたくさんアップできるようがんばりますね。 それから、お友達からバトンが回ってきましたv 【I love you 和訳バトン】 <ルール> その昔、『I LOVE YOU』を夏目漱石が『月が綺麗ですね』と訳し、 二葉亭四迷は『わたし、死んでもいいわ』と訳したといいます。 さて、あなたは『I LOVE YOU』をなんと訳しますか? もちろん、『好き』や『愛してる』など直接的な表現を使わずにお願いします。 そして、その後1~5人の人に回してください。 ストレートに「愛してる」って言ってもらえたら嬉しいけど、でも、男のひとってなかなかそう言わないみたいですよね? わかるだろ、とか言うのはズルイですよねえ。わかってても、言葉が欲しいのに。 そう

    nuryouguda
    nuryouguda 2011/07/03
    読みました
  • 唐草銀河: 極月――私とあたしとわたしの物語 夢は個人の神話 <101>

    Back Index Next 夢オチというやつは最悪なパターンなのだけど、この場合は相当してしまう。  目をさますと、私は床に這いつくばって寝ていた。頬にはしっかりとシーツならぬストールの後が残り、みっともなくも涎と口紅がついていた。シルク混のカシミアなのに。クリーニングに出さなきゃだよ。  私が四階の「時任洞」に入ったところまでは事実で、なんなら下の階の画廊のオーナーにきいてくれてもいい。  そこから先は、誰にもわからない。たしかめようがないんだから(ただし、私が床においた封筒から二万円は消えていて、あとで浅倉くんに調べてもらったら、十二月に買った南部鉄瓶の代金としてちゃんと入金されていたそうだ)。  気をとりなおし、私は大きく息をすいこんでその部屋を出た。変な姿勢で寝たものだから、背中が痛かった。でも、気分は悪くない。  夜明けの、日が昇ったばかりの中央区を自転車でかっとばして築地

    nuryouguda
    nuryouguda 2011/02/28
    最終回。えええ!謎が分からない!でも姫香さんの旅行願望は熱かったと思う。さて、やっと続編が読めます。最後はちゃんとPCで読みたかったので積読になっていたという・・・
  • 唐草銀河

    磯崎愛の小説サイトです。2019年6月現在病気療養中のため更新休止中です。「はじめに」を、年齢制限等をお守りの上、御入室くださるようお願い申し上げます。

    nuryouguda
    nuryouguda 2010/09/24
    キチンと覚えておくのだー。あしたこそそうごりんくするぞ。・・・
  • 唐草銀河: 睦月――時任洞の物語 うつし世は夢 夜の夢こそまこと <10>

    Back Index Next 私はなんといっていいかわからなくて、バルトルシャイティスの『幻想の中世』をさしだした。  獏は表紙を見てすぐ表情を変えた。ついでに元に戻っていた。  あ、これ読みたかったのぉ、といってそそくさと受け取った。  無言のまま様子をうかがっていたら、さすがにばつが悪かったらしく、そういう秘密を打ち明けるときはもうちょっと気をつかってよ、とうつむいた。  こちらが謝る番なのかと微妙に納得がいかないような気がしながらも謝罪した。  あやまったら、意外と気持ちが落ち着いた。  やっぱり私が悪かったかもしれないと反省したところで、獏が吐息をついた。  ごめんね。びっくりしたの。ほんと、ごめんね。  そう、かわいらしい小さな声がいった。大きな獏が、すごく小さく見えた。  私は当に悪いことをしたと思い、もう二度と獏を驚かせないようにしようと誓った。  当はいろいろ聞きた

    nuryouguda
    nuryouguda 2010/09/22
    読書家の年上の人のおはなしだなー。ダンセイニとダンテとタイタニックくらいしかガノタにはわかんなかった(ちょっと嫉妬)。さて、導入の後、どうなるのかしらねー。
  • 唐草銀河: 睦月――時任洞の物語 うつし世は夢 夜の夢こそまこと <1>

    Back Index Next 失敗した。  こんな日にかぎってピンヒールのブーツ履いてきちゃったよ。  二十二半のの踵が落ちるほど狭い、手すりのついた急な階段を見あげていったん立ちどまり、カラオケボックスの派手な蛍光看板をちらりと横目にし、気合を入れてカバンを肩にかけなおす。  左手にはの入った紙袋の持ち手がいこんでいる。  目指すは「時任洞」。古美術・古道具屋だ。  一階に大衆居酒屋、二階にカラオケ、三階には現代アート画廊というエレベーターもない雑居ビル最上階の四階にそれはある。 「こんばんは」  入り口にかかる藍染の暖簾をおしあげて見えるのは、正面に陣取る階段箪笥だ。  その上にそれぞれ、紫座布団に座った金色の招き、マサカリ担いだ金太郎さん、ガラスケースに入った博多人形が置かれている。  これだけ頭身の違うものを同じ高さだというだけで並べられる店主のセンスがすごい。  長方

    nuryouguda
    nuryouguda 2010/09/22
    「うつし世は夢 夜の夢こそまこと」いいね。大好きだね。
  • 唐草銀河:それを何と呼ぶかは貴女が決めてくれ 8

    Back Index Next べつに驚かなかった。これは、予測の範囲内。 こいつは、それ――茉莉がショックを受けること――が俺への抑止力として働くと思っている。自分がそうだから、相手も同じに違いないとしか考えていない。 だが、それでは戦えないんだよ。浅倉。 「お前なら、俺を殺すとでも言うだろうが、俺はお前に感謝するよ」 浅倉の無言が俺を竦みあがらせることはない。 息を凝らしていたのは浅倉のほうだ。 「ひとは、不幸さえも快楽なんだよ。血がつながっているいないなんてことは、俺には当に問題じゃない。問題じゃないと感じる俺がおかしいんだ。いや、つながっているほうがいいとすら欲望する。 深町さんは、そんな俺の欲望を否定しなかった。そのいっぽうで近親姦はいまとなっては安手のラブロマンスだと喝破した。あのひとはそう言えば俺が躊躇するとでも思ったのかもしれない。たしかにいっときは抑止力になったが、いま

    nuryouguda
    nuryouguda 2010/09/15
    ドキドキしました。で、やはり第三者からみたらイライラもどかしいな。深町さんを読まないといかんかー
  • 唐草銀河:それを何と呼ぶかは貴女が決めてくれ 6

    Back Index Next 俺は嘘をついている。わかりやすくも言える。だが、わかりやすく言えば、浅倉にただ反論されるだけだ。そして、深町さんも取り合わない。言えてしまった時点で、それはもう「問題」ではなくて努力対象になるというのが深町サンの判断だ。俺は、それをこそ問いたいのだが、うまくいくかはわからない。なので、 「なんで」 という浅倉の子供じみた質問には苦笑しながらこたえる羽目になった。 「いつでも、どんなときでも正論を吐けるのがあのひとの最大の難点で、どうしようもない美点だろう?」 「それ、人の前で言える?」 「言えるさ。言うだけなら」 開き直った俺に、浅倉は猛然と噛みついた。 「自分の狡猾さを省みず、全部お任せって何それ? あの人はあんたのためにいるわけじゃないし、それから茉莉ちゃんにも失礼だ」 あらかじめ、それにはこたえる用意があった。 「俺には、茉莉に払うべき礼儀はない。生

    nuryouguda
    nuryouguda 2010/09/07
    潔癖で理屈っぽい兄が古い事まで掘り返して反省蟻地獄に堕ちてるのは共感できる。本編の深町さんのキャラも気になり始めてきた
  • 唐草銀河:それを何と呼ぶかは貴女が決めてくれ 5

    Back Index Next 目の前の男は身じろぎひとつしなかった。それは、礼儀にかなっている。 「お前が深町さんを守りたいがために話しをしないならそれでいい。俺は来須に頼んで言伝してもらうこともできるし、もちろん自身で頭をさげる覚悟もある。だが正直、俺は茉莉のことだけで精一杯だ」 茉莉はなにも疑っていない。だが、俺の記憶のなかには幾つかの綻びはある。 とはいえそれを親父に突きつけて離婚前から付き合いがあったと白状させるのは下策だ。それに俺は、女性なら自分の孕んだ子供の父親が誰かわかるだなんて言い種をそのまま素直に受け取るほど素朴にはできていない。男出入りのあったひとだと知っている。だからこそ、DNA鑑定だなんてことを持ち出すわけにはいかないのだ。 「俺はそれを義理の母親にしか尋ねられない。父を無罪放免にしてすましたいわけじゃないが、茉莉に知らせないようにするにはそれしかない」 「……あ

    nuryouguda
    nuryouguda 2010/09/06
    頭の良い兄が妹への感情を処理できなくなって、代わりに腐女子理論を酒の席でまくし立てるのがかわいい
  • 唐草銀河:あたしのお兄ちゃん 5

    Back Index Next あたしはお兄ちゃんの妹だから他の女のひとよりもずっと長い時間一緒にいられて、わがままだっていっぱい聞いてもらった。お兄ちゃんを独り占めしたくて、あたしはお兄ちゃんがもらったチョコレートも全部、べた。ほんとはチョコ好きじゃないけど、お兄ちゃんのほうがチョコ好きなのも知ってたけど、あたしが好きだって言ったら絶対にくれるのわかってたから。 あたしが作ったものを美味しいといってべてくれるお兄ちゃん。 お兄ちゃんが、ほんとは嫌いなものを知っていて、あたしはそれを知らん振りして作ったりする。 あたしは意地悪だ。 綺麗で優しいお兄ちゃんに意地悪をしたくてしょうがない。 ねえ、どこまでしたら、あたしを嫌いになるの? もうやめろっていうの? 離れてくれって、いいかげん誰かと結婚してくれって言うの? それとも、深町さんと結婚するなんていわないよね? ねえ、お兄ちゃん! あた

    nuryouguda
    nuryouguda 2010/09/02
    張り詰めた妹伏線がユーモア兄オチにまとまってとても美味しい。私も普段はアレですが、あの時はソレだから共感します。お幸せにー
  • 唐草銀河:あたしのお兄ちゃん 4

    Back Index Next あの日、あたしは母親の言いつけを無視してデパートの屋上にひとりでのぼったの。おうちの三面鏡の前にいる母をみるのは好きだったけど、おトイレで自分の顔をみつめる母は、いつもと違って近寄りがたかった。あたしのこと、見てないように感じた。いま思えば、あたしはお母さんにやさしくなかったなあって反省する。あんなときに娘に逃げ出されたら、再婚に反対だって意思表示みたいだよね? もちろん、そんなつもりじゃなかったんだけど。 でも、あたしもほんとは不安だった。 新しいお兄さんに会うのが。 苛められたらどうしようって心配した。お兄さんは私立の学校に行っているって聞いてたし、お父さんの声も、お医者様のように優しすぎてこわかった。あたしの当の父親は、あんなふうにこっちの様子をみながら喋らなかった。かといって、ただたんに再婚相手の娘として機嫌をとられているってわけでもなくて……。

    nuryouguda
    nuryouguda 2010/09/02
    あ、この出会いの描写は良い資料になりました
  • 唐草銀河:それを何と呼ぶかは貴女が決めてくれ 1

    Back Index Next 世の中に、「妹萌え」ということばが流行りだしたのはいつの頃だろうか。その前はたしか、「シスコン」といったはずだ。 しかしながら厳密にいえば両者に多大なる差異があるかもしれず、俺は無茶なことを言い出しているのかもしれない。だいたいサブカルチャーに疎いので「萌え」の意味がよくわからない。だからというわけでもないが、そのふたつに違いを認め難いというだけのはなしである。とはいえシスコンの語には「姉」も含まれることくらい瞬時に気づくべきだ。 俺はそうとう疲れている。ああ、疲れているのだ。 こんなことでグダグダ悩むくらいなら、プルーストでも読むほうがいい。フランス語を忘れないためにも原書で読むかと考えていたところで電話が鳴った。 「龍村さん、泊めてくださいよ」 浅倉悟志だ。同い年の後輩は学生時代と変わらず俺の家を急場の避難所だと思っているようだ。断ったとて、来ることは間

    nuryouguda
    nuryouguda 2010/09/02
    兄妹と聞いて
  • 唐草銀河:あたしのお兄ちゃん 1

    Back Index Next お兄ちゃんに、見られた。 あれを。 あの、秘密文書を。 「ずっと、あんたが好きだった」 「朝倉?」 「辰村サン、もういいかげん諦めて、オレのものになってよ……」 朝倉の手が、頬に触れた。久雄はびくりと肩を震わせて目の前にいる男の浅黒い顔を見つめ、その両目に純然たる欲望が宿っているのに気がついた。 あたしのお兄ちゃんは龍村功という。独身貴族というのかしら、こんな時代でも年に一度は海外までクラッシック・コンサートを聞きにいったりと、ひとりで悠々自適に暮らしてる。 あたしはピアノの先生をしながら両親と一緒に千葉県の実家に住んでいる。ごくたまに、お兄ちゃんが家に戻ってきてくれるのは、家族に対する最低限の御勤めだと思ってるみたいだった。 それもしょうがないのかなあ。うちは、連れ子のいる再婚家庭だから。あたしは新しいお父さんのことをすぐに好きになったし家にも慣れたけど、

    nuryouguda
    nuryouguda 2010/09/02
    いけなくはないけど、やられたら一週間は詰る。でも、ちょっとうれしい。でも、顔には出さない。でも、ばれるんだ
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