ヒトとチンパンジーの母子関係には、「見つめあう」「微笑みあう」という共通の性質がある。ただ、ヒトだけに顕著なのは、声を交わすことだ。 寝かされた赤ん坊の顔をのぞき込み、手であやし、声をかける。赤ん坊も見つめ返し、手をばたつかせ、声を返す。こういう一連のなにげない親子関係は、実はヒト特有の行動だと松沢さんは言う。 これもまた、母親と切り離されていても、仰向けで落ち着いていられる、ヒト独特の性質なしには成立しえない特徴だ。 もと霊長研で今は滋賀県立大学の明和政子さんによると、ヒトは9ヶ月頃には、他者が注意を払っているもの対象を視線で追ったり、見知らぬ物に出会ったときお母さんと見比べたり、他者に指さしをしてお母さんの関心を引き寄せるということをしはじめるという。 猫に指さしすると、指先を見つめはするけど、指さした先を見ることはない。 実は指さしを理解するのはヒトと犬だけなんだよね。