1994年、『姑獲鳥の夏』をひっさげて登場した京極夏彦さんは、一躍ミステリー界に旋風を巻き起こした。あれから29年、京極さんが生み出した物語の数々は、現代のエンタメ全般に大きな影響を与え続けている。作家生活30周年を間近に控え、現代の戯作者は何を語るのか。京極さんのこれまでと現在に迫るロングインタビュー。 取材・文=朝宮運河 写真=山口宏之 一作のエンタメが時代を大きく変えることがある。 1994年9月に刊行された『姑獲鳥の夏』はまさにそんな作品だった。当時まったくの無名だった作家が放った長編はミステリーファンのみならず幅広い層に衝撃を与え、「百鬼夜行」シリーズの第1作として、日本のカルチャーシーンに絶大な影響を与えることになるのだ。 それから29年、シリーズ17年ぶりの長編『鵼の碑』がついに刊行される。『邪魅の雫』においてタイトルだけは明かされていたものの、長く謎のベールに包まれていた『