情報倫理学とは、情報通信社会における倫理的諸問題に対処するための研究である。セキュリティ、プライバシー、知的財産権、表現の自由などをめぐる、きわめて現代的な重要問題を分析し解く手がかりを与える。本書はその情報倫理学のスペシャリストである著者の力作だ。人文社会科学・哲学系と理工学系の両者に通じた著者の強みが活かされた好著。 * 「情報倫理学は、情報社会を理解し、そこでよりよく生きるために役立つ学問であるべきと考える。筆者のバックグラウンドは、哲学・倫理学および科学技術史ということになろうが、本書において見るように、情報社会を理解しようとするにあたっては、相当に雑多な分野横断的な現在使える知識はすべて使い、体系化を行うというよりも、よりジャーナリスティックに、問題に即して考察を進めるという姿勢であたってきた。…… この執筆を行ってきた間にも、新しい技術が次々と登場し、さまざまな事件が起こったう