「GDPで測られる『経済力』はもはやフィクションにすぎず、リアルな経済的実態を反映していないのです」――欧米を代表する「知の巨人」エマニュエル・トッド氏がGDPを「時代遅れの指標」と語る意味、そしてGDP2位の中国が「世界の脅威」になりえない理由とは? トッド氏の新刊『我々はどこから来て、今どこにいるのか? 上 アングロサクソンがなぜ覇権を握ったか』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む) GDPでは現実は見えない GDPがもはや「時代遅れの指標」であることも指摘しなければなりません──といっても、人類学的アプローチを重視する私が「経済」を軽視しているわけではありません──。 現下の戦争をGDPの観点から見てみましょう。ロシアによるウクライナ侵攻前夜の2021年、世界銀行のデータによれば、ロシアとベラルーシのGDPの合計は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、