社会に出て役に立つ子、稼げる子を育てるため、多くの親がお金と労力を惜しまない。しかし、国立筑波大学付属小学校に30年余り勤務し、現在は副校長を務める田中博史氏は、日常の接し方にこそ子どもの「考える力」(または「知的に動ける子ども」)を育てるチャンスがあるという。その子育ての具体的な方法を、実例とともにくわしく聞いた。 お母さん、あなたの負けですよ 夏休みの旅行中、周りを見渡すとたくさんの親子連れ。楽しそうな旅の最中なのに、子どもが泣きべそをかいていた。どうやら親子喧嘩勃発のよう。 漏れ聞こえてくる子どもの言い分は「ぼくは聞いていない」「そんなの初めて知った」「ぼくはやりたくない」という言葉。どうやら親子で行うイベントを親が勝手に申し込んだことが原因のよう。小学校の低学年の男の子だった。 傍で聞いていると、この男の子の言い分の方が筋が通っていて、私は心の中で(お母さん、あなたの負けですよ 笑