連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」のモデル水木しげるさんの作品の一つに、漫画「総員玉砕せよ!」(講談社文庫)がある。 何ともやり切れない物語だ。先の戦争で、南方のある島の守備隊が米軍の攻撃を持ちこたえられなくなり玉砕を命じられる。ところが戦場が混乱する中、80人余りが生き残ってしまう。 玉砕は全員戦死が大前提だ。免れるのは許されない。司令部は守備隊の指揮官に自決を、一般の兵士には再度の玉砕を命令する。泣く泣く従う兵士たち…。 水木さん自身の体験を元にしている。「90%は事実」だという。 <戦争への仕掛け> 生きて虜囚の辱めを受けず。先の戦争では多くの兵士が理不尽な戦陣訓に縛られ、なくさなくてすむ命をなくした。 家族も苦しめられた。ある日、召集令状が届く。嫌な顔をするのは許されない。隣近所からの「おめでとうございます」の声に、家族は気丈に応える。映画などによくでてくる光景である。