自転車で都内を走っていると、五輪招致のための横断幕やのぼりが、23区内の商店街を席巻していることに気づかされる。 日本だから、できる。 新しいオリンピック! パラリンピック! キャッチコピーの眼目は、「日本だから」と「できる」の間に、「、」(読点)を打っているところにある。 どういうことなのかというと、「ニッポンダカラ」というこの6音節ほどの文字を発声するために、語り手は、息継ぎを要しているわけで、つまり、彼は叫んでいるのである。感極まって、祖国の名をコーリングアウトしているのだ。 ニッポンダカラ! デキル! と、だから、このノボリを目にする度に、私は、シュプレヒコールに囲まれたみたいな奇妙な気持ちになる。 おい、大丈夫なのか? オレの街はおかしくなり始めていないか? と。 いつの間に、こんなことになってしまったのだろう。 この怒号(うん。大げさな表現だ。わかっている)は、つまり東京都の商