拙著『サバービアの憂鬱』が角川新書の一冊として復刊されることについては前の記事でお知らせした。その新書版のあとがきを書き終えたあとで、思い出していたのが、もうだいぶ前に杉江松恋さんのご厚意で拝読させていただいた『サバービアとミステリ 郊外/都市/犯罪の文学』のことだった。 この電子書籍は、杉江さん、川出正樹さん、霜月蒼さん、米光一成さんが、ミステリをコミュニティの動態を描いた小説という観点から眺めてみることに挑戦した座談会を収録したもので、『サバービアの憂鬱』がその参考書として取り上げられていた。 『サバービアの憂鬱』の視点を応用して、ミステリの作家や作品の世界を多面的に読み解いていくアプローチは刺激的だった(もっと個人的なことをいえば、筆者がその昔、ロス・マクドナルドや横溝正史を好んで読んでいた理由も説明されているようで興味深かった)。 この『サバービアとミステリ』の冒頭には、杉江さんの