雑誌『POSSE』などで労働問題の相談にも長く経験と積んできた今野氏のブラック企業の実態とそれへの対処方法、そしてブラック企業を含む日本の雇用社会の改革を記した本である。ブラック企業の人を辞めさせる手法の洗練化と複雑化が具体的に書かれていて、特に企業内のカウンセリング手法を用いた悪質な人間の追い込みの実態は、まさに外道の様相であろう。またブラック企業のブラックな手法を補うブラック弁護士など「士族」の実態にも詳しい。 ブラック企業を生む背景としては、「代わりのいる若者」という新卒市場の問題であり、また非正規雇用の活用もあわさることで、単に景気がよくなればすむ問題ではない、という構造的な視点が優位になっている。実際にブラック企業は景気のいい悪いに関係なく存在する問題ではあるだろうが、毎度のことながら、今野氏の視点にはまったくマクロ経済の環境をよくするための政策はごそっと抜け落ちている。 それは