「大正っ子」。幼少期から青年期にかけ、15年戦争、敗戦、そして戦後復興という最も多難な時代を生き抜いた大正生まれ(1912年━26年)世代の多くはこう自称していた。敗戦時に父31歳、母22歳だった筆者の亡き両親もそうだった。生存者は今や82歳から96歳に達し、この戦前派の人々が今、ロウソクの灯のように日々消え去りつつある。 この世代の子供である、筆者ら団塊の世代も20年後には80歳代に突入する。高度成長、経済大国の仲間入りを経ての、食生活、住環境、医療体制の目を見張る改善は、社会の高齢化進捗に拍車を掛けている。こんな中、現在の深刻な景気後退を尻目に、老人介護ビジネスは興隆の一途を辿っている。巨大新興ビジネスの現場に介護助手として入り込み、波乱に満ちた戦争世代の人生の黄昏をのぞいた。 ■景気後退はビジネスの好機 2008年11月半ば過ぎのこと。「えー。本気ですか。60歳の方に体力のいる介護助