こんな話がございます。 唐の国の話でございます。 唐の咸通年間のこと。 トある城下の、トある巷間に。 幻術使いが一人現れまして。 童子一人の手を引いておりましたが。 どうして、これが幻術使いと知れたかト申しますト。 「さあ、お立ち会い、お立ち会い。これから世にも不思議な幻術をお目にかけましょう。寄ってらっしゃい、見てらっしゃい――」 ト、みずから吹聴して歩いておりますから。 ナルホド、こいつは幻術使いだなト。 巷の人々にも知れたので。 まるで西域人みたような。 栗色の巻き毛に獣皮の帽子。 見るからに胡乱な男でございます。 ただし漢語は何故だか流暢で。 子どもたちは、二人の後をはしゃいでついていく。 大人たちも冷やかしに、後を追っていきますト。 トある広場に差し掛かるや、幻術使いは立ち止まった。 手を引かれてきた童子もまた、立ち止まる。 年の頃なら十歳ばかり。 まだあどけない童子でございます
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