2021年早春、2本のヤクザ映画が相次いで封切りされた。藤井道人監督の『ヤクザと家族 The Family』。西川美和監督の『すばらしき世界』である。 ヤクザ映画といっても、従来のそれとは異なり、視点が違う。いずれも、ヤクザを辞めた主人公が社会復帰することの難しさを描く。暴力団や暴力団離脱者にとって、現代社会の風当たりは強い。 もともと日本社会では、ヤクザは社会における「必要悪」として存在を黙認されてきた。しかし、2010年から全国で施行された暴排条例以降、状況は一変する。世間のヤクザに対する「まなざし」は変化し、排除する姿勢に容赦はない。憲法で保障された当たり前の権利すら認められないことから、離脱しても社会復帰が難しい。斜陽の現代のヤクザには「残るも地獄、辞めるも地獄」という現実がある。 そうした時代にあって、暴力団離脱者を排除する社会、彼らの社会復帰における困難さを描いた作品が、相次い