(東京大学出版会・3360円) ◇父性の登場から「家族の起源」を探究する 人類の社会生活の基礎である性・経済・生殖・教育の四機能を果たすのが家族であり、世界中の共同体が家族を単位としている。しかもこれは人間以外の動物には見られない。 家族って何だろう。どのようにして生まれたのだろう。その崩壊が語られる今、それを問うことには大きな意味がある。家族の起源を霊長類から人類への進化の中に探ろうとする学問は、サルの個体識別という独自の方法により日本で始まった。その後海外での研究も始まり、主としてアフリカの類人猿(チンパンジー、ボノボ、ゴリラ)社会の研究からさまざまな考え方が出された。その中で著者は、父系であるゴリラ社会で、母親という生物学的存在に対し、父親という文化的存在が生まれたことが家族への道だと提唱した。 しかし、類人猿の一生と世代の追跡、遺伝子(DNA)解析による個体移動や繁殖行動の追跡がで