第七回歴史コミュニケーション研究会に出席した。 報告内容についてはこちらとかこちらで既に詳しい説明があがっているからいいとして、私が気になったのは第二部「さかのぼり世界史A」である。というのも、なんか普段文学や芝居、映画のナラティヴに触れている人にとっては「さかのぼり世界史」は本当はさかのぼってないんじゃないかという疑惑があり、実は初めての査読論文が小説をタイムラインに起こしてみるというものだった私にはなかなか気になるところで…と、いうわけで、独断と偏見で「時間が過去から未来に直線的に進まない作品のナラティヴ分類」を今後のためにやってみようと思う。こういう時系列の分析って読解テクニックとしてけっこう文学や映画の人は学校で習ったりふだんの経験で身につけたりするんだけど、いい参考文献見つからなかったので何も見ないで自分の手業で書いてるからちょっと不適切なところがあるかも…いい文献あったら誰かコ
細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』が、2012年を代表するアニメ映画のひとつであることに疑問の余地はないだろう。この作品は「おおかみおとこ」である夫を事故で失った未亡人の花が、二人の「おおかみこども」(雨と雪)の子育てに悪戦苦闘する物語である。洗練された映像と音楽、それに感動的なストーリーが多くの観客を魅了し、公開直後から大きな反響を呼び起こすことになった。 しかしその一方で、『おおかみこども』に対する否定的な意見も少なくない。評論系のブログや同人誌では、実際の子育てと大きく異なっていることや、母親をある種のヒーローとして描くことについて、かなり手厳しい批判がなされている。なかでも注目したいのは、「そもそも主人公の花に共感できない」*1というものだ。たしかに母子家庭の子育て(しかも狼男と人間の子供)という大変な状況にもかかわらず、何があってもニコニコしている彼女は──作中でその理由は一
『魔法少女まどか☆マギカ』という物語 『魔法少女まどか☆マギカ』は閉じられた物語だ。第1話アバンの文字通りの幕が上がる舞台開幕の演出より、最終話Cパートを綴じる閉幕までで一つのパッケージとして完結している。また、その本当の閉幕が行われる以前の時点でも毎回閉じられてきた物語でもある。 第10話で描かれる、暁美ほむらの時間遡行の魔法の力とそれによる運命改変のための繰り返しが、 1話冒頭で主人公鹿目まどかが見た夢の内容やほむらの言動にそれまでとは違った意味を付加し、それまで視聴者が感じていた物語の印象を上書きするのが象徴的だが、話数と共に伸びていく(その時点での)ストーリーの終着点は、1話からそこまでの意味を何度も書き換えた。 例えば1話の時点ではほむらが転校してくるシーンはまどかにとってほむらとの初めての出会いであるが、10話で付加された情報によって1話のその邂逅が二人の初対面の場面ではなく再
勤務先が自転車で15分の場所にあるおかげで、朝の連続テレビ小説を見て出勤するのが長年の習慣になっている。気の合う作品と出会えると、朝の仕事にもその作品に合った調子が出て、半年間がその作品の緩急にうっすら染まる一方、一、二ヶ月で見落とすようになってしまうこともあり、そんな場合は、ドラマもそこそこに出勤してしまう。これまで、最後まで見続けたものは『オードリー』『てるてる家族』『芋たこなんきん』『ちりとてちん』と大阪放送局制作のものが多い。 『カーネーション』を、3/31まで楽しみに見続けた。『カーネーション』を見ていると、作者や演出家、スタッフが、朝の生活をいかに丁寧に描いているかがよくわかった。早い朝、眠い朝、ミシンを踏みながら迎えてしまう朝、子どもを蒲団から追い出す朝の光が描かれ、時代ごとにかわる衣装や家のつくり、調度に配慮が行き届き、物語の朝が、見ているこちらの朝に染みてくる。 尾野真千
去年の六月のことになるのですが。 埼玉の獨協大学より依頼を受けまして、学生さん相手に授業をしたときの話からはじめたいと思います。 「ポピュラー文化と社会」というオムニバス講座の中で、漫画を扱う枠もあっての依頼でした。 いろんなツテをたどって自分に声がかかったそうで、関係者の先生方にはまず感謝申し上げます。 「ポピュラー文化と社会」と漫画 2コマぶんの授業を担当していたのですが、一回目は拙著『漫画をめくる冒険』や『ユリイカ』誌上の内容に則した、漫画の読み方/読まれ方のメカニズムを簡単に解説して──「入門編」的な内容としては、去年の冬コミに出た『マンガルカ』の原稿と同じくらいの範囲ですね。 二回目は、そんな「漫画」というメディアがある一方で、他のメディアはどう消費されるものなのか? という文化比較からのメディア論がメインになりました。 漫画論からメディア論に展開させたことには意図もあります。
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く