昭和のある時期、海外に「日本」をPRするグラフ誌が盛んに作られた。東京・茅場町の古書店主、森岡督行さん(38)が約10年をかけて集めた成果『BOOKS ON JAPAN 1931―1972 日本の対外宣伝グラフ誌』(ビー・エヌ・エヌ新社)からは、日本の自画像の連続性がほの見えてくる。 森岡さんは以前勤めていた古書店で、戦争中の対外宣伝グラフ誌について書かれた本に出会った。シベリア抑留経験のある祖父らの話を聞いて育ち、時代への関心から収集を始めた。 海外の古書店もインターネットで調査。本では、これまで国内で存在を知られていなかったものも含め、106点を紹介する。 対外宣伝グラフ誌の刊行は、31年の満州事変を機に国際的孤立が深まる中で盛んに。鉄道省をはじめとする政府組織や新聞社などが「文化的、近代的で平和な日本」の発信を目指した。 欧米向けの英仏語版のほか、カタカナ、タイ語版など「大東亜共栄圏
(名古屋大学出版会・5880円) ◇経済人はなぜ満州事変を阻止できなかったのか 日本の真珠湾攻撃を知ったその日、南原繁は「人間の常識を超え学識を超えておこれり日本世界と戦ふ」と詠った。無謀な戦いであり、先に待っているのは敗北だけと思われるのに、戦いが始められてしまった衝撃を詠んだものだ。政治哲学者・南原が、歌のなかで、学識とともに挙げた言葉が「人間の常識」だった点に、目を奪われる。 いっぽう、産業革命期の日本資本主義の全体像と特質を描くことにかけて、右に出る者がいないと言われる本書の著者・石井寛治。1997年の著作『日本の産業革命』のなかで石井は、近現代史を帝国主義史として批判的に描くことを「自虐的」だとして排する史観の流行を批判し、こう述べていた。いわく、「世間の常識」を完全に無視するわけにはいかないが、研究者たるものは、常識=体制への批判精神を欠いてはならない、と。 人間の常識に敬意を
新潮選書 2012年5月 司馬遼太郎史観への異議申し立てのような本である。 要するに明治の日露戦争あたりまでは日本はまともであったが、昭和の太平洋戦争のころにはそれがまったく失われてしまったという見方への抗議である。明治対昭和、日露戦争と太平洋戦争という構図に対して、しかし、その間に大正という時代があったし、第一次世界大戦もあったではないかということである。 わたくしは不勉強なので、第一次世界大戦というのはヨーロッパの戦争で、日本は蚊帳の外であったと思っていた。それで、最近の「お勉強」で明治大学での日本の近代の歴史の講義で第一次世界大戦中に日本の海軍が英国の輸送船団の護衛の役を務めていたことを知りびっくりし、さらにこの片山氏の本で、青島のドイツ要塞を日本陸軍が攻撃陥落させていたことを知って呆然としている。 なんでそのような思い込みをしていたのか考えてみると、第一次世界大戦は古き良きヨーロッ
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