一般には非公開となっている「ミキモト」の真珠養殖場。米「ニューヨーク・タイムズ」紙の記者が三重県志摩市にある「ミキモト多徳養殖場」を訪れ、130年にわたって培われた技術に迫る。 雨が激しく降りつけ、強い風に海が荒れていた──私が日本の本州にあるこの沿岸の町に「ミキモト多徳養殖場」を訪ねた日は、春にしては珍しい天気だった。だが工場の従業員たちいわく、晴れ間が出てくる直前には、いつも強風が吹くものなのだという。 そして「ミキモト」は2023年、多くの“青空”を予測している。この企業の創業者である御木本幸吉が真珠養殖に成功して、今年で130周年を迎えるのだ。 多徳養殖場は、御木本が養殖法を開発した場所である。彼の夢は、1905年に明治天皇に告げたと伝えられているとおり、「世界中の女性の首を真珠で飾る」ことだった。彼は「真寿閣(しんじゅかく)」と呼ばれる生家をこの地に移築し、1954年に96歳で没