日本経済は歴史的にどのような成長を遂げてきたのか――近年、経済史研究の進展によって1000年以上の成長記録、超長期GDPが明らかになった。一体どんなことがわかるのか? 『経済成長の日本史―古代から近世の超長期GDP推計 730-1874』著者の高島正憲氏が綴る。 日本の歴史像が覆りつつある 小学校の歴史の授業で習った万葉の歌人・山上憶良が詠んだ「貧窮問答歌」には、過酷な徴税にさいなまれる当時の貧しい農民の姿が描かれている。 また、時代劇に登場するような、悪代官の年貢の取立てに苦しんで、最後に反抗して一揆を起こす江戸時代の農民など、人口の大多数を占めていた前近代の日本の庶民の姿は、古代からずっと貧しかったようなイメージが強いだろう。 近年の歴史学研究の進展によって、そうしたステレオタイプの貧しい農民のイメージや、西欧諸国より遅れた前近代日本という以前の印象はずいぶんと変わってきたようにみえる