私が最近折に触れて読み返す本がある、夏目漱石著の「私の個人主義」だ。予備校の現代文担当教師に、「みなさん大学に入ったら夏目漱石の私の個人主義を読んでみて下さい。」そう言われ、私はすぐに読んだけれどそのときは、なぜその予備校講師がその本を私にすすめるのか、そのよさが本当のところ皆目わからなかった。しかし、大学を卒業し偶然またその本を読む機会があったとき、私は夏目漱石の「私の個人主義」論にひどく共感してしまったのだ。それが、そのときの私の試行錯誤している状態の心の空隙をうったからだろうか。 私が何度も読み返す一節がある。 「....だから個人主義、私のここに述べる個人主義というものは、決して俗人の考えているように国家に危険を及ぼすものでも何でもないので、他の存在を尊敬すると同時に自分の存在を尊敬するというのが私の解釈なのですから、立派な党派な主義だろうと私は考えているのです。もっと解り易くいえ