ロシアが3月に強制併合したウクライナ南部クリミア半島の住民がこの夏、観光客の極端な落ち込みで大きな打撃を受けている。黒海に面するクリミアは、旧ソ連時代から夏の保養先として人気があり、観光はこの地域の主要産業だ。しかし、訪問客の約半分を占めていたウクライナ国内からの観光客が今年、姿を消してしまった。ロシアとの対立激化が主な原因で、観光業に従事する人々は「併合の恩恵はまだ得られていない」と嘆く。観光業の不振は、クリミアが抱える新たな火種となる恐れもある。(クリミア半島、佐々木正明、写真も) 気候が温暖なクリミアは海水浴用の砂浜が黒海沿岸に点在する。また1945年に米英ソの首脳が戦後処理を話し合ったヤルタや、モンゴルのチンギスハンの末裔(まつえい)がつくったクリミア・ハン国の首都、バフチサライなどに数多くの歴史的遺産が残されており、多くの観光客を引きつけてきた。 しかし、この保養地を取り囲む