東日本大震災後、「デフレは悪い」という主張が経済論壇でますます強まっている。これは政治的党派の左右を問わない。保守派と目される中野剛志・三橋貴明の『売国奴に告ぐ!』(徳間書店)という威勢のよい題名の対談本を読んでみたら、御多分に漏れずデフレを悪と決めつけたうえで、グローバル化や構造改革は「デフレを加速させる政策」(三橋)だと糾弾し、デフレから抜け出すには「とにかく何でもいいから財政出動して〔略〕需要を喚起しなくてはならない」(中野)と力説していた。 しかしデフレは本当に悪だろうか。デフレとは物価全般が持続的に下落することを指すのだが、三橋はデフレだと商品の売値が下がって「超薄利」にしかならず、企業に不利だと言う。だがそれはおかしい。利幅は売値とコストの差で決まるのだから、売値が下がってもそれと同様にコストが下がれば、利幅は縮まらない。 利幅が小さくなったり赤字になったりするとしたら、それは