不景気の原因は、国民がカネを使わないことである。だから景気を良くするには、政府が国民になり代わってカネを使ってやればよい――。ケインズ経済学に毒された政治家や言論人はこう主張する。しかしこれは大きな勘違いである。欲しくないものを無理に買わせても人間は幸せにならないし、社会も豊かにならない。 「日本のケインズ」として最近人気を集める高橋是清は、政府の国防費についてこんなことを書いている。「国防のためには、材料も要る、人の労力も使はれる。それらの人の生活がこれに依つて保たれる。だから拵(こしら)へた軍艦そのものは物を作らぬけれども、軍艦を作る費用は皆生産的に使はれる」(『随想録』中公クラシックス) これを『目覚めよ! 日本経済と国防の教科書』(中経出版)で引用した経済評論家の三橋貴明は、「高橋是清の『国民経済』に対する理解度は、驚愕するほどに深い」と持ち上げる。そして「国民の安全に直結する公共