それって資本主義のせい?資本主義を批判する人々の多くは、誤ってかわざとか、資本主義が起こしたわけではない問題を取り上げ、資本主義のせいにする。資本主義にしてみればとんだ濡れ衣だ。 本書も残念ながら、的外れな批判をいくつもしている。 たとえば、資本主義が欠乏を生み出す典型例として、土地をあげる。ニューヨークやロンドンでは不動産価格が異常なほど高騰する一方で、家賃が支払えない人々は長年住んでいた部屋から追い出され、ホームレスが増えていく。「社会的公正の観点から見ればスキャンダラスでさえある」(第六章)と著者は憤る。 しかし不動産相場が過熱している最大の原因は、金融緩和政策による通貨の過剰な供給である。現代において通貨の発行を独占し、その量を操作しているのは政府の一部門である中央銀行だから、民間部門が主導する資本主義のせいにするのはおかしい。政府の介入を排除する資本主義の原則が今よりも徹底してい