本稿ではアニメ『響け!ユーフォニアム2』(2016)と『リズと青い鳥』(2018)を題材にして、鎧塚みぞれというキャラクターの性質、ならびにそれが作品において表す機能を考察する。特定人物に対し素朴で重い感情を向けるみぞれの心のあり方が、経験則や作者の意図から判断すると普遍的なものとみられると同時に、作中の言説や同じく経験則からしても異端めいてみえることに着目し、鎧塚みぞれが一つの「狂気」の形象として現れること、それが『リズと青い鳥』の物語を動かすよう機能していることを指摘する。 「恋に狂うとは言葉が重複している。恋とは既に狂気なのだ。」(ハイネ) 普遍と異端 私が『響け!ユーフォニアム』の二期第4話の鎧塚みぞれの告白を聞いて抱いたのは、「素朴だ」という印象だった。鎧塚みぞれは百合的に「ヤバい」という前評判を聞いていたし、1話からしてみぞれの面倒をみる吉川と希美の復帰を手伝う中川の立場の違い