イヤフォンから流れてくるレッド・ホット・チリ・ペッパーズの「ノック・ミー・ダウン」。フリーの跳ねるようなベースラインが、はかどらない仕事のあとの重い気分を和らげる。追い討ちをかけるような残暑。熱いだけの太陽。眩しいだけの空から落ちてきた駅前の黒いビルディングの陰は小さい。陽射しを逃げるように駆け込んだファーストフード。そこで僕は彼女と再会した。 記憶のなかと同じように笑わず無愛想で、記憶よりも少し老けた彼女を僕は女王陛下と呼んでいた。そして僕は、オッパイ星人の僕は、彼女が、ぺチャパイの女王陛下が、嫌いだった。大嫌いだった。笑顔を見せない女王陛下が。女王陛下はファーストフードの制服に身を包んでいた。何やってんだよ。思わず言いたくなる。 彼女とは大学時代、刑事訴訟法ゼミで一緒になった。何の考えもなく法学部生になってしまった僕と目標を見据えて法学部生になった彼女とはゼミについての考えが合うわけが