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ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (241)

  • 早川書房のSFコンテストを受賞した二作(ハードSFの期待の新星『オーラリメイカー』、描写で魅せる重厚なSFファンタジィ『天象の檻』)を同時に紹介する。 - 基本読書

    オーラリメイカー 作者: 春暮康一,rias出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/11/20メディア: 単行この商品を含むブログを見る天象の檻 作者: 葉月十夏,長乃出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/11/20メディア: 単行この商品を含むブログを見る春暮康一『オーラリメイカー』は第七回SFコンテストの優秀賞、葉月十夏『天象の檻』は同じく第七回の特別賞ということで、どちらも今一番新しいSFコンテストからの刊行作になっている。このSFコンテストは2012年に一度仕切り直された形で始まった賞なのだけれども、全7回のうち今回も含めて3回が大賞が出ていない(特に第4回以降は大賞が出たのは、第5回の『コルヌトピア』『構造素子』のみ)。 というわけで、この数回の実績だけみると大賞が取りづらい賞ともいえるのだけど、そのかわりこうして芽のある作品はちゃんと刊行されるともいえる。

    早川書房のSFコンテストを受賞した二作(ハードSFの期待の新星『オーラリメイカー』、描写で魅せる重厚なSFファンタジィ『天象の檻』)を同時に紹介する。 - 基本読書
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    peketamin 2019/11/25
  • 科学的で現代的な「人を動かす」──『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』 - 基本読書

    事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学 作者: ターリシャーロット,上原直子出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2019/08/11メディア: 単行この商品を含むブログを見る事実では人の行動は変わらないという。議論をしたときに「これこれこういう事実がある」という主張をしても相手の意見が変えられなかった、ということは多かれ少なかれみな体験しているものではないだろうか。たとえば、アメリカではワクチンを摂取することで知的障害などが発生するリスクがあるというデマが拡散して、そのせいで百日咳やおたふく風邪が今更蔓延するというアホくさい状況が発生している。 ワクチンによって知的障害リスクが上がるのは完全にデマなので、科学的な事実の啓蒙を行えばいいでしょ、と思うかもしれないが、実はこれには全然効果がないのである。ある実験では反ワクチン思想を持つ親を集め、麻疹にかかった子どもの痛まし

    科学的で現代的な「人を動かす」──『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』 - 基本読書
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    peketamin 2019/10/13
  • ヒューゴー賞を三年連続で受賞し、荘厳なアートワークで圧倒する化け物級のエピック・ファンタジィ・コミック──『モンストレス』 - 基本読書

    モンストレス vol.1:AWAKENING (G-NOVELS) 作者: マージョリー・リュウ出版社/メーカー: 誠文堂新光社発売日: 2017/12/22メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るこの『モンストレス』はいわゆるアメリカン・コミックで、中国アメリカ人のマージョリー・リュウが原作、日人のタケダサナが作画をそれぞれ担当して、現在も刊行が続いているファンタジィ・シリーズである。最新刊は現状三巻まで。 で、一巻が出た頃から話題になっていたのだが、その後の快進撃が凄い。その年のヒューゴー賞のグラフィックストーリー部門を受賞。アイズナー賞、英国幻想文学大賞など数々の栄誉ある賞を獲得し続け、話題はその後も継続し続けている。たとえばヒューゴー賞は、3年連続(2017、18、19)で受賞、18年についてはグラフィックストーリー部門とプロアーティスト部門で原作者と作画者が同時受

    ヒューゴー賞を三年連続で受賞し、荘厳なアートワークで圧倒する化け物級のエピック・ファンタジィ・コミック──『モンストレス』 - 基本読書
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    peketamin 2019/09/22
  • 最先端物理理論の提唱者が語る、時間の実態──『時間は存在しない』 - 基本読書

    時間は存在しない 作者: カルロ・ロヴェッリ,冨永星出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2019/08/29メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る時間は存在しない、といきなり言われても、いやそうは言ったってこうやって呼吸をしている間にもカチッカチッカチッと時計の針は動いているんだから──とつい否定したくなるが、これを言っているのは、一般相対性理論と量子力学を統合する、量子重力理論の専門家である、職のちゃんとした(念押し)理論物理学者なのである。 名をカルロ・ロヴェッリ。彼が提唱者の一人である「ループ量子重力理論」の解説をした『すごい物理学講義』は日でもよく売れているようだが、書はそのループ量子重力理論から必然的に導き出せる帰結から、「時間は存在しない」ということをわかりやすく語る、時間についての一冊である。マハーバーラタやブッタ、シェイクスピア、『オイディプ

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    peketamin 2019/09/10
  • SFマニアからビギナーまであらゆる層を満足させる、オールタイム・ベスト級の傑作SF短篇集──『なめらかな世界と、その敵』 - 基本読書

    なめらかな世界と、その敵 作者: 伴名練,赤坂アカ出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/08/20メディア: 単行この商品を含むブログを見るこの『なめらかな世界と、その敵』を端的に紹介すれば、SFマニアからビギナーまであらゆる層を満足させる、オールタイム・ベスト級の傑作SF短篇集である。とはいえ著者伴名練の名は、SFファン以外は聞いたことはないだろう。既刊行作は『少女禁区』という約10年前に刊行された中短篇集一冊のみで、その後も企画物のアンソロジーに散発的に短篇を発表しるのみだったから、普通は知る機会は多くはない。 だが、SFファンの間では、書の刊行前から伴名練の名は異常なほどの熱気でもって知られていた。というのも、商業発表作こそ少ないものの、同人誌に毎年のように新作短篇を発表しており、その作品の出来がまた凄まじかったからだ。それまでのSFの先行作を緻密かつ複雑に折り込み、舞

    SFマニアからビギナーまであらゆる層を満足させる、オールタイム・ベスト級の傑作SF短篇集──『なめらかな世界と、その敵』 - 基本読書
  • 絶望的な負け戦をどう戦うか──『NOKIA 復活の軌跡』 - 基本読書

    NOKIA 復活の軌跡 作者: リストシラスマ,田中道昭,渡部典子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/07/04メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見るノキア、復活の軌跡というけれど僕の中でノキアが復活したというイメージはまったくなかった。どちらかといえば、2011年まで世界最大の携帯電話端末メーカーだったのに、まったくスマートフォン時代についていけずに失墜し、その後は携帯電話事業をマイクロソフトに売り渡し、その後どうなったのか完全に意識の外にいって消えていた存在だけれど、今は残された通信技術の会社として、フランスの通信機器大手とも合併をし、と世界の通信事業者の中でも巨大な位置を占めているんだなあ。 書は2008年にノキアの取締役に就任し、最も苦しい時期のノキアの舵取りを任されてきたリスト・シラスマによるビジネス体験記になる。復活の軌跡とはいうが、現代はT

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    peketamin 2019/07/14
  • 中国だけで2100万部、話題性と本物のおもしろさを兼ね揃えたバケモノ級の中国SF──『三体』 - 基本読書

    三体 (ハヤカワ文庫SF) 作者:劉 慈欣早川書房Amazon『三体』とは! 中国の作家劉慈欣によって書かれたSF三部作の第一部目にして、中国国内だけで三部作累計2100万部を刊行し、さらに日でも人気のケン・リュウによる翻訳によってアメリカ歴史あるヒューゴー賞を受賞した傑作である。ヒューゴー賞受賞の何が凄いかと言うと、翻訳書としてははじめてのの受賞になるのだ。 それぐらい作品の内容が圧倒していたともいえる。で、あまりSFとは縁のなさそうなオバマやザッカーバーグも絶賛していたりとか、アニメ化が決定したりとか話題は尽きないんだけれども、とにもかくにもこれだけは覚えて帰ってもらいたいのは、この『三体』は、話題先行の内容はまあおもしろいね、いうほどじゃないけど的な軟弱な態度で読み終わる作品ではなく、その肥大化しきっているともいえる話題性に劣らない、圧倒的なおもしろさのある、純粋におもしろいSF

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    peketamin 2019/07/08
  • 21世紀の戦争はなぜ、どのように変わったのか──『140字の戦争 SNSが戦場を変えた』 - 基本読書

    140字の戦争 SNSが戦場を変えた 作者: デイヴィッドパトリカラコス出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/05/31メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るSNS上では常に人々が罵り合っておりまるで戦争状態のようだが、そういう意味での戦場ではなく、実際にウクライナやイスラエルvsハマスといった実在する戦場をいかにSNSが変えたかというレポートである。『これは戦争についてのである。と同時に物語──戦争のナラティブとナラティブの戦争──についてのでもある。』 著者は中東をメインに取材するジャーナリストだが、イスラエルとガザの情勢などを調査・報道するうちにとある大きな変化に気がついたことが書を書くきっかけになったようだ。それは、戦争が、戦車や大砲を用いる物理的なものと、民間人までをも巻き込みソーシャルメディアを駆使したナラティブなものの2つに分かれているという事態

    21世紀の戦争はなぜ、どのように変わったのか──『140字の戦争 SNSが戦場を変えた』 - 基本読書
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    peketamin 2019/06/09
  • 読者に見事な魔法をかけてくれる、マジック&ロボットSF──『魔法を召し上がれ』 - 基本読書

    魔法を召し上がれ 作者: 瀬名秀明出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/05/16メディア: 単行この商品を含むブログを見る瀬名秀明さんによるマジック&ロボットな近未来SF小説である。僕は装丁が気に入ったのとけっこうなボリュームがあったのでそのへんの期待感から手にとったのだけれども、たいへんに素晴らしい傑作。冒頭、レストラン《ハーパーズ》で料理が出る前のお客にマジックを披露しているマジシャンの青年ヒカルが、最初の大失態をしでかすまでのシークエンスは特に素晴らしく、この世界に集中力を根こそぎ持っていかれてしまい、降りるはずだった駅を過ぎてしまったぐらいだ。 優れたマジシャンは観客の注意を引きつけ、自在にコントロールすることで驚きを演出するが、書を読んでいる時の感覚はまさにそれである。小説を読んでいて降りる駅で降りられない経験なんて僕はほとんどしたことがない(2,3回ぐらいだと思う

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    peketamin 2019/05/31
  • Kindle読み上げでたくさん本を読む - 基本読書

    この何ヶ月かKindle読み上げを利用してけっこうな冊数を読んでいて、なかなかいいぞとかこれは難しいぞという知見が貯まってきたのでここらでいったん共有したい。Kindle読み上げとは何なのかといえば、Kindleのアプリケーションに存在する読み上げ機能を使って音声でを読むというただそれだけのことであり、別に特段のスキルも準備も必要ない(最低限スマホかタブレットは欲しいところだけれども)。設定方法については面倒なのでこの記事では解説しない。Kindle読み上げで検索スべし。 katsumakazuyo.hatenablog.com この記事では方法よりも「そもそもどんなが読み上げに向いているのか?」とかの使用感を中心にしていこうと思う。僕自身も人がやっている(勝間和代さんとか)のを見かけてやってみたのだけれども、正直最初は半信半疑であった。ていうか音声で聞いてたら読み終えるのに時間かか

    Kindle読み上げでたくさん本を読む - 基本読書
  • データ化すれば客観的に評価できるという考えの落とし穴──『測りすぎ──なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』 - 基本読書

    測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか? 作者: ジェリー・Z・ミュラー,松裕出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2019/04/27メディア: 単行この商品を含むブログを見る僕の業はWebプログラマで、こうした職業としてはありがちなこととして何社も転々としながら(時にフリーで)仕事をしているのだが、極少人数の企業をのぞけばだいたい「どうやって社員の成果を評価するか」といったところで試行錯誤している。 メンター的な存在が評価するようなケースもあれば、成果をできるだけ定量的・客観的に評価しようとするところもありと様々だが、やはりIT界隈ということもあり後者の機運の方が高い。より納得感のある評価制度があれば会社側も勤めている側もウィンウィンなので、定量的・客観的な評価が「当に」できるのであればそれは良いことなのだけれども、あんまり「こりゃうまくいっている!」というところは

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    peketamin 2019/05/18
  • 女性のみ、一日に喋れる語数が百語までに制限された社会を描くディストピアSF──『声の物語』 - 基本読書

    声の物語 (新ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者: クリスティーナダルチャー,オートモアイ,市田泉出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/04/18メディア: 新書この商品を含むブログを見るクリスティーナ・ダルチャーの2018年に刊行されたばかりのデビュー長篇『声の物語』は、記事名にもいれたように、女性が一日に発話可能な語数が100語以下に制限され、女性の権利が大きく制限されたアメリカを描くディストピアSFである。 正直、最初にそのあらすじを読んだ時「そんなバカな笑」と笑ってしまった。一体何がどうしたら女性が100語しか喋れない社会がやってくるわけ? と。だが、語り手となる女性ジーン・マクレランも、かつてはそうして「そんなことになるわけがない」と最悪の想像を笑い飛ばし、選挙にも行かず、見えている危機に対処してこなかった人物として描かれており、「そんなバカな笑」と”笑い飛ばしているあい

    女性のみ、一日に喋れる語数が百語までに制限された社会を描くディストピアSF──『声の物語』 - 基本読書
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    peketamin 2019/04/25
  • 次の世界への道標──『光の量子コンピューター』 - 基本読書

    光の量子コンピューター (インターナショナル新書) 作者: 古澤明出版社/メーカー: 集英社インターナショナル発売日: 2019/02/07メディア: 新書この商品を含むブログを見る光子を用いた量子コンピュータについての一冊である。決して光のコンピュータがあるからといって闇のコンピュータがあるわけではない(最初勘違いした)。 著者は量子テレポーテーション分野の研究者にして今なお新しい成果を発表し続けている古澤明氏。さすがに量子コンピュータについての説明は複雑な計算を要する部分も多く書を読めばまるっとその原理がわかるというわけではないが、非常にシンプルにその原理を説明すると共に、最前線の研究者によって「いま」何ができて、眼の前に見えている難題をクリアしていった先に「どのような革新的な技術が生まれるのか」を提示し、わずか180ページほどの内容で非常にワクワクさせてくれる。 量子コンピュータと

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    peketamin 2019/04/16
  • イーガンの最良の部分が詰まった傑作SF短篇集──『ビット・プレイヤー』 - 基本読書

    ビット・プレイヤー (ハヤカワ文庫SF) 作者: グレッグイーガン,山岸真,Rey.Hori出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/03/20メディア: 文庫この商品を含むブログを見るイーガンの最新邦訳短篇集である! イーガンは最近は『シルトの梯子』やら〈直交〉三部作やら、長篇の刊行が続いていたので、短篇集の刊行としては複数出版社のものをあわせて六冊目、前短篇集の『プランク・ダイヴ』から数えると、八年ぶりだ。そんだけ期間が空くと、たまにSFマガジンに訳出されたものを読んでいたとはいえ、イーガンの短篇ってどんな感じだったかなあと忘れている面もあったが、いやーあらためてこうして通しで読んでみると、やっぱりめちゃくちゃおもしろいな! 収録作をざっと見渡してみると、『白熱光』ラインの格宇宙SFである「鰐乗り」「孤児惑星」、イーガンの現実に対する政治的な危機感がよく現れている「失われた大陸

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    peketamin 2019/04/04
  • 多彩で多才な中国作家によるSF短篇集──『郝景芳短篇集』 - 基本読書

    郝景芳短篇集 (エクス・リブリス) 作者: 郝景芳,及川茜出版社/メーカー: 白水社発売日: 2019/03/21メディア: 単行この商品を含むブログを見る中国の作家郝景芳(ハオ・ジンファン)初の邦訳短篇集である。日では作家ケン・リュウによって編訳された中国SFアンソロジー『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』の、そのまま邦題に入っている「折りたたみ北京」の著者といったら(SFファンには)伝わるか。この作品はヒューゴー賞の中篇小説部門も受賞しているし、『現代中国SFアンソロジー』で他に訳されていた作品も非常に質の高いものだったので期待していたのだけれども、これがおもしろい、というか技が広い。 収録作は全七篇で、その中には「北京 折りたたみの都市」のように中国社会階層を圧倒的な情景で紡ぎあげてみせる作品もあれば、お前は中国のバリントン・J・ベイリーかよと言いたくなるような大スケー

    多彩で多才な中国作家によるSF短篇集──『郝景芳短篇集』 - 基本読書
  • 未来を見る方法──『WTF経済 ―絶望または驚異の未来と我々の選択』 - 基本読書

    WTF経済 ―絶望または驚異の未来と我々の選択 作者: Tim O'Reilly,山形浩生出版社/メーカー: オライリージャパン発売日: 2019/02/26メディア: 単行この商品を含むブログを見るプログラマからすると頭が上がらない技術書出版社のボス、ティム・オライリーによる、テクノロジーと未来についての一冊である。書名の「WTF経済」って何、と思うかもしれないが、WTFとは、what the fuck,なんじゃこりゃとかなんてこった的な表現で、人工知能iPhone、ウーバーなど、驚異的な技術と発想の産物であると同時に、多くの人が恐怖と共に受け入れてきたWTF? 製品を、これまでの捉え方とは「ちがう道で」選び、受け入れていかなければならないと語る啓蒙の書である。 『大きな経済変革の時代に、それをテクノロジーのせいにするのは簡単だ。だが問題もその解決策も、人間の選択の結果なのだ。』『驚

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  • 奇妙で奇天烈、詩情とヴィジョンに支えられた快作揃いのSFアンソロジー──『Genesis 一万年の午後』 - 基本読書

    Genesis 一万年の午後 (創元日SFアンソロジー) (創元日SFアンソロジー 1) 作者: 堀晃ほか出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/12/20メディア: 単行この商品を含むブログを見るSFアンソロジーは『NOVA 2019年春号』が出たばかりだが、今度は東京創元社から創元のNOVAと言われていた『Genesis 一万年の午後』が出た! huyukiitoichi.hatenadiary.jp NOVAの方がそれぞれの著者の持ち味・テーマを前面に押し出した、わりとストレート寄りのSFが多かったのに比べると、このGenesisは作家の多くが東京創元SF短編賞(この賞で募集しているのは”広義の”SFで、受賞作も幅広い)の受賞者に寄っており、作風としてもストレンジ、スペキュレイティブな方に振られている。変なものを書かせたら一級品の高山羽根子、倉田タカシや宮内悠介に、百

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    peketamin 2018/12/27
  • 音が支配する世界を描くディストピア音楽文学──『鐘は歌う』 - 基本読書

    鐘は歌う 作者: アンナ・スメイル,山田順子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2018/11/21メディア: 単行この商品を含むブログを見る『鐘は歌う』は、〈大崩壊〉によってロンドンの橋という橋が落ち、人々の目はみえなくなり鼓膜は破れ、それをきっかけとして書面による言葉の伝達・記憶が封じられた世界を描くディストピア小説だ。街には巨大な楽器であるカリヨンとそれに連動したパイプオルガンが設置されており、日の出と日没時に街中に向かって配信される、調和を目指した歌を歌い、一種の共同洗脳状態へと陥っていくことになる。 朝課には、組み鐘は澄んだ音をやわらかく響かせ、一体化を説く──静かに、やさしく。カリヨンの一体化ストーリーは交唱形式で、質問には回答を、呼びかけには応答を求める。ぼくたちの声は、カリヨンに与えられるメロディをなぞる。カリヨンの問いに、ぼくたちは正しい回答を返す。つねに同じ、つね

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    peketamin 2018/11/25
  • 脳が進化していくどのタイミングで神が現れたのか?──『神は、脳がつくった――200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源』 - 基本読書

    神は、脳がつくった 200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源 作者: E.フラー・トリー,寺町朋子出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2018/09/27メディア: 単行この商品を含むブログを見る神は脳がつくったとはいうが、だいたいの感情や概念は脳が作っとるじゃろと思いながら読み始めたのだが、原題は『EVOLVING BRAINS, EMERGING GODS』。ようは「具体的に脳が進化していく過程でどの機能が追加された時に、神が出現したのか?」という、人間の認知能力の発展と脳の解剖学的機能のを追うサイエンスノンフィクションだった。神は主題ではあるが、取り扱われるのはそれだけではない。 認知能力が増大した5つの変化 書では主に、認知能力が増大した5つの重要な段階を中心に取り上げていくことになるが、最初に語られるのはヒト属のホモ・ハビリスである。彼らは230万年前から1

    脳が進化していくどのタイミングで神が現れたのか?──『神は、脳がつくった――200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源』 - 基本読書
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    peketamin 2018/11/11
  • 人間に子供が産まれなくなった未来を描き出す、森博嗣によるSFシリーズ、ついに完結!──Wシリーズ - 基本読書

    人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly? (講談社タイガ) 作者:森 博嗣発売日: 2018/10/24メディア: 文庫森博嗣による、人間による子供がほとんど生まれなくなり、人工知能などの電子知性が人間を遥かに上回る能力を発揮しはじめたばかりの状況を研究者の視点で描き出すWシリーズが先日出た第十作目『人間のように泣いたのか?』でついに完結。 この記事では完結ということでざっくりシリーズへの総評的なものをして置こうと思うが、まずなにをおいても素晴らしいSF作品であったというところは最初に書いておきたいところだ。特に、高度な人工知能、ロボットが当たり前に存在し、人々の寿命が飛躍的に世界はどのような社会をとるのか──意思決定、政治の在り方・戦争、研究手法などなど──といった描写は、10作ものシリーズ物であるから世界各地の細かい部分まで含めて描かれ、議論されており素晴らし

    人間に子供が産まれなくなった未来を描き出す、森博嗣によるSFシリーズ、ついに完結!──Wシリーズ - 基本読書
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    peketamin 2018/11/04