有能な男、と言われた場合「一を聞いて十以上を知り、百以上のパフォーマンスをあげ、抜きんでた出世をする」、そんな定義をするのだろうか。 有能と聞いて思い出すのは、20年ほど前に同じ職場で働いていた星野さん(当時30歳くらい:仮名)だ。彼はどんな仕事も的確につかみ、他者が及ばないほどの処理能力を見せ、そして必ず定時で帰宅した。妻子が大好きで、育児にも力を注いでいたからだ。いや、家庭のほうが彼のメインで、仕事は余力であしらっているようにも思えた。それくらい、どんな仕事も軽々とこなしていた。 その辺の部課長よりも断然仕事の理解度も処理度も優れていたが、出世には興味がないようだった。管理職になって、家庭で過ごす時間が奪われるほうが、彼にとっては損失だったのだろう。実に優先順位が明確で、ブレがなかった。 この日本でそういう生き方を選択するには、それなりの胆力がいる。幼いころから競争社会にもまれ、サラリ