解体の決まった同潤会江戸川アパートで思いもよらず数々のすばらしい「作品」を見つけました。 そこには現在の集合住宅のルーツとしての先進性があったのと同時に、 現代の建築ではほとんど見ることのできない左官の技が至る所に残っていました。 古びた外観や更新された設備とは対照的に、それらの「作品」はたいした補修もなく、あたりまえに使われていたのです。 工場生産品を持ち込んでセットするだけ、あるいは現場作業の楽な乾式の工法に頼ることの多くなった現代の建築の仕上げとはおよそ正反対の姿がそこにはありました。 現在とは比較にならないほどの「湿式」の仕事の跡が残っているのです。 そのデザインと仕上げが素晴らしいと感じるのは、単なるノスタルジーからではなく、 理想的な集合住宅を創りだそうという建築家の意気込みと、それに応える職人達の技の融合がそこにあるからなのです。 そして当時は当たり前であったはずの技術が今、