阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」 2006年12月24日 暗闇のスキャナーと犬死 P・K・ディックがまた映画化された。「スキャナー・ダークリー」(厳密に訳すと「朧なスキャナー」。最初の邦訳であるサンリオ版が「暗闇のスキャナー」と題したのでそれを踏襲する)である。「ブレードランナー」から「マイノリティー・レポート」まで、ディックの映画化はことごとく原作の冒瀆ないしは改悪だったけれど、この映画化はこれまでになく原作に忠実だった。 ということは、70年代の饒舌と退屈、難解と通俗、悲痛と滑稽が入り混じっているということだ。あの時代を知らない世代に、この苛烈なユーモアはまず伝わらない。キアヌ・リーブスの名に釣られてきた女の子の観客が、「ぜーんぜん分かんない」とロビーでつぶやいていた。 彼らがいま原作を読めば驚くだろう。イトーヨーカ堂に買収される前の「セブン・イレブン」が冒頭で出てくる。ジャ